映画レビュー 宇宙人ポール (Paul)



(★★★★★ 星5つ)

たまには頭を使わないものを鑑賞。イギリス人オタク2人組がコミケに行き、ついでにUFO関係の土地を回るという出だしでは、この映画に馴染めるかなと思ったのだが、意外に楽しめた。宇宙人が出てくるものは「そんなのじゃないはず」というリアリティーが(実際に宇宙人の様子が想定されるとして、だが)問題にされるが、この宇宙人「ポール」は地球に馴染みすぎていて、俗語も使えばタバコもマリファナもやるという具合。
そこまで来ると、リアリティーのどうのなどということはどうでもよくなり、観客はあとは成り行きに任せてストーリーを追うだけになるのだが、展開が面白い。ネタバレになるので大筋は書かないが、宇宙人ポールを追う黒幕が誰なのかも、宇宙人もの映画が好きな人にとってはいい人選。

全篇笑いに包まれながら観ることになるのだが、イギリス人のダサさやアメリカの田舎の有様やキリスト原理主義に対する皮肉とか、LGBTに対する視線とかも笑いの要素に含まれているのは、大人向け。しかしLGBTに対する視線はちゃんと差別的言辞を避けるように配慮されていて、安心して見られる。「頭を使わない」とはいっても、エンターテインメントとしてよく練られていて、そこは某国のクズ映画とは違う。万人が見てハッピーになれる映画。(2012/11/27 記)