映画レビュー アイム・ソー・エキサイテッド! (Los Amantes Pasajeros)


(★★★★☆ 星4つ)

ペドロ・アルモドバルの作品には、ゲイが主題でなくともゲイ要素がふんだんに詰め込まれていたものだが、これはモロにゲイのCAが主役のコメディー。ただし、主役とはいってもポスターの3人のうちどの人が主役ということはなく、キーにはなっているけれども乗客達も物語をひっぱるキーになるので、主役がいっぱいの映画ということができるかもしれない。

スペイン発メキシコ行きの飛行機が着陸用の車軸トラブルで不時着の危険がありつつ着陸する空港を求めてスペイン上空を旋回する間、オカマ(差別語だが作中スペイン語でオカマを指すmaricoが連発されるのでここでも敢えて使う)CAがビジネスクラスの癖のある乗客たちやコクピットも巻き込んでハチャメチャなことをやらかす。この映画を楽しめるかどうかは、その設定に乗りきれるかどうかにある。「ここではとにかくあり得ないめちゃくちゃが繰り広げられるのだ」と前もって心の準備をしてしまえば面白いが、そのためには映画鑑賞や飛行機搭乗時に携帯の電源を切るように、倫理観のスイッチをオフにしておくことが重要。

さて、倫理スイッチを切ったところで映画の中では酒、ドラッグ、セックスがどんどん展開していく。というと普通は暗かったり、不幸の湿っぽさが漂うのに、この映画はどこか乾いていて、陰湿でねちっこい感じがしない。そこはコメディーとはそういうものだという割り切りにくわえ、やはりアルモドバルならではの感性が活きているからだろう。
割り切りといえばすごいのが、機中での舞台は、ストーリー上一部エコノミークラスも出てくるが、そのほとんどをビジネスクラスから前に限局してしまっているところ。そう割り切らせる設定として「エコノミーの客はうるさいから(エコノミークラス症候群云々のため、とセリフではなっているが)配るドリンクに薬を混ぜてみんな眠り込ませている」としているのもハチャメチャ。なのに設定が甘いとか浅いとか感じさせられない。かるーく楽しんでアハハと笑って、最後めでたしめでたしで終わらせる物が観たいが大人ならではのジョークがなければ面白くないとか、ストーリー性に独自の人間臭さがほしいという人にお勧め。

これをアルモドバルが作った意味だが、今までどんなにシリアスに作っていても、どこか可笑しみを感じさせる人が最初からコメディーを作るとこうなる、という点が興味深かった。他にも独特の色彩感覚はまさにアルモドバル。そして登場人物に対する癖のもたせ方(描かれる人間の背景)も。カメラワークも「ああ、アルモドバルだな」と思わせるところが多々。アルモドバルの作品が好きなら、これは異色とはいえ楽しめるはず。(2014/1/30 記)

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