映画レビュー ゼロ・グラビティー (Gravity)



(★★★☆☆ 星3つ)

原題は単に”Gravity”。象徴的ラストシーン(ここではネタバラしなし)からすれば、原題の方が優れているが、興行成績を上げるには無重力としてゼロをつける方がいいのだろう。ただ、英語が苦手な日本人にとって「グラビティー」と書かれてそれだけで何かを想像するには難しいかもしれない。

ともあれ、本題。感想を大きく挙げるとするならば2点。まず、大阪弁で言うところの「んなアホな」。そして、「そういうメンタリティーの人はそもそも宇宙に行けない」である。観た人はおおむね高評価であるようだが、俺にとってはそれらの点で感覚にフィットしなかった。

詳述するに、「んなアホな」だが、ストーリーの展開として偶然のうちの幸運が多すぎる。そうはならないだろうなというシーンの連続で、リアリティーを殺ぐ。うまくいかないシーンもあるのだが、映画の時間内に展開を詰め込みすぎであるせいか、「そんなにうまく行ったら最初から冷静な判断しとけば済む話じゃん」という具合に、気分がかえって盛り下がってしまう。

で、そもそも最初からという話でいうと、サンドラ・ブロック演じる主人公の、すぐ癇癪を起こしたりパニックを起こしたり、目の前の客観事実に専念できないような性格では、候補者選考でまず真っ先に落とされて宇宙空間に行くことはないだろうなということ。前提条件として怪しいそうした点が、また作品へ没入しようとすることを妨げる。宇宙から見た地球の美しいCGや、すごい撮影技術にもかかわらず、興の乗らない映画。映画が成功するには前提からまず綿密にストーリーを組み立てる必要があるのだなあと感じさせられた。(2014/1/14 記)