最初に言っておくが、残念なレビューを書くものの、俺は基本的にはPiper-Heidsieckは好きだ。シャンパーニュに求める華やかさ、リッチ感、独自の存在感、プレゼンテーションすべてを気に入っている(基本的には。←の留保はこのレビューによる)。好きであるがゆえの高い期待感があり、このキュヴェには少しそれを裏切られた。
Piper-HeidsieckのエクストラブリュットであるEssentielにブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワールが出たのでパートナーと飲み比べようと買って置いておいたのだが、パートナーが出張だ何だとバタバタしていて、一緒に飲む機会を逸してしまっていた。で、もう待てないとまずブラン・ド・ノワールを開けた。(笑)
PHのラインナップで最新のこれだが、普通ブラン・ド・ノワールといえばピノ・ノワール100%が一般的。BdNを出すというのはこだわりの造りだから、ピノ・ムニエは使われない場合が多い。ムニエはフルーティーさなどのバランスを取るためによく使われるが、やはりピノ・ノワールとシャルドネには一歩劣る印象で、上級キュヴェには使われない場合が多いというのもある。
が、Essentiel Blanc de Noirsの場合、ピノ・ノワール80%にピノ・ムニエ20%で醸されるのだそうだ。そして理由はというとやはり、フルーティーさや食事との合わせやすさらしい。
そしてこのキュヴェはVDC (Sustainable Viticulture in Champagne)に従った栽培によるブドウを使った最初のものになるのだという。シャンパーニュでは土壌保護や身体への影響を鑑みてどんどんビオやサステナブル製法が普及していて、PHもそれにならったものだろう。
期待感とともに開栓。グラスに注ぐと、予想していた色ではない。もっとピノ・ノワールめいた、オレンジのヒントを持つゴールドカラーをしているかと思いきや、色はペール。そしてオレンジのヒントはほとんどない。
どれ、と飲んでみる。レモンピールや花の香りはする。が、弱い。華やかさが今ひとつ。液体はまるめられた感じで、これがブラン・ド・ノワール?と思う位にあっさりしているのだが、あっさりしすぎな感じがする。フードはさほどペアリングを嫌わない。ガストロノミーを意識してのものだろうか。
が、この物足りなさはずっと続く。飲み進めても香りや味わいに変化があるわけでもなく、細い印象そのまま。温度を変えてみてもさほど変化はなし。飲み残して翌日・翌々日と飲んでみてもそれは変わらず。雄弁でプレゼンテーションの巧いネットアイドルと会う前にイメージを勝手に膨らませていて、実際に会ってみたら、さほど魅力的でもないし会話の内容も浅くて興醒め、といった感じだ。
ノーマルのEssentiel Cuvée Brutを飲んだ時にも感じた物足らなさがあったが(そういえばこのブラン・ド・ノワールには呼称として公式サイトからCuvéeの表記が消えていた)、あれとわざわざ区別してこれを出す価値があったのだろうか、と思われるような線の細さ。かといってそのデリケートさの中にある奥深さが見えてくる訳でもなく。PHに期待するリッチ感に欠け、シャンパーニュを飲んでいるという優雅さな気分にさせてくれない。