シャンパーニュレビュー Nicolas Feuillatte Palmes d’Or 2008 Rosé Intense


ロゼシャンパーニュはその名の通り「色物」と見られる場合が多い。シャンパーニュメゾンが売上を上げたければ、ロゼを造ればいいという皮肉もある。普通のシャンパーニュにちょっと赤ワインを足して色をつけて(シャンパーニュではロゼの製法としてアッサンブラージュが認められている)値段を上げてロゼと銘打って売り出せば、見た目とプレステージ性で買う人がいるからだ。実際、そんなお手軽製法のロゼはたくさんあるし、味もシャンパーニュを飲みつけた人でなければ、「シャンパンってこんなもんなのかな」と思われて終わり。ロゼが出される機会は、真剣に向き合って飲むというよりは、祝いやパーティーなどが圧倒的に多いだろう。そこに「赤ワインのタンニンが気になる」だの「香りが本来のシャンパーニュに求められているところとはシフトしている」などと文句をつける人はいない。だから、シャンパーニュの何たるかを知る人からすれば、ロゼは華やかだけれども本流でない、と目される訳だ。

が、ロゼを真剣に考えて造っているメゾンもいくつかある。Nicolas Feuillatteはそんな少数派メゾンの一つなのだろうな、と、今回飲んでみて好印象を抱いた。

Nicolas Feuillatte Palmes d'Or 2008 Rosé Intense
Nicolas Feuillatte Palmes d’Or 2008 Rosé Intense

Nicolas Feuillatte Palmes d’Or 2008 Rosé Intense(ニコラ・フィアット パルメドール2008 ロゼ・インテンス)は、Nicolas Feuillatteのプレステージキュヴェ。セパージュ(使用されるぶどう品種の比率)はピノ・ノワールのみ、ブジィとリセイの2つのクリュから。セニエ(ぶどうの果皮を果汁に浸潤して色をつける製法)で作られている。セラーで10年熟成された後出される。

ミュズレはこのキュヴェ独自用。こういうところはプレステージキュヴェならではの贅沢。
ミュズレはこのキュヴェ独自用。こういうところはプレステージキュヴェならではの贅沢。
コルクのキャップフォイルを開けると、quoteが出てくる。ロラン・バルトの言葉だそうだ。初めて見る演出。
コルクのキャップフォイルを開けると、quoteが出てくる。ロラン・バルトの言葉だそうだ。初めて見る演出。

色は驚くほど濃い。色の濃さから「これは渋いかな」とか「赤ワインぽいのだろうか」と少し味が心配になる。

オレンジのヒントを持つガーネット色。
オレンジのヒントを持つガーネット色。

が、一口飲んでそれは杞憂であることを知る。端正でスムーズ。そしてすみれやいちごの華やかな花果が踊り、ブリオッシュの香ばしさが薫る。時間が経つにつれ、華やかさは増し、しかしあくまで端正で、飲む時間を特別なものにはしてくれるが飲む人があくまで主役、でしゃばりすぎない品の良さ。

フードペアリングも、適応の幅が広く、トリュフブリーや羊乳のチーズ、ドライフルーツと相性が良かった。

良いチーズ、良いドライフルーツはシャンパーニュの友。
良いチーズ、良いドライフルーツはシャンパーニュの友。

今回、このキュヴェはパートナーの41回目の誕生日記念に贈ったのだが、パートナーも大満足。元々、ブランのパルメドールはパートナーのお気に入りキュヴェの一つだったが、このロゼは心に残る1本だった。ニコラ・フィアットは、正直、日本においては知名度・プレステージ性が、ヴーヴ・クリコやドンペリニヨン、モエ・エ・シャンドン等に比べてあと一歩だが、シャンパーニュの品質の良さは本物。このロゼは、シャンパーニュ好きには是非飲んでみてほしい。