ひと月ほど前にトップキュヴェのSpecial Clubを飲んで好印象だったGaston Chiquetだが、ブラン・ド・ブラン(白ぶどうだけで醸されるシャンパーニュ)はどうかと、飲んでみた。
Gaston Chiquet Grand Cru Blanc de Blancs d’Ay Brut(ガストン・シケ グラン・クリュ ブラン・ド・ブラン・ダイ ブリュット)は、名前のとおりグラン・クリュのアイ村で作られたブラン・ド・ブランのシャンパーニュ。ピノ・ノワールで有名なグラン・クリュ(特級)のアイ村でシャルドネのみを用いたシャンパーニュというとAmour de Deutzを連想する。
酸をまろやかにするマロラクティック発酵を施し、50ヶ月熟成。単一年で作られ、本来はミレジメとして扱われるべきものだが、作年よりもアイ村でのテロワール(土壌)をアピールしたく、敢えてミレジメを名乗っていないとか。
グラスに注ぐと厚い泡の層ができるが、ほどなく落ち着く。口に含んだ泡は広がりが豊か。
レモンゼストや白桃のピュレ、アカシア、レンゲはちみつの香りがし、爽やかな要素はあるが、香味は幅広く、豊潤。白ぶどうだけから造られているからといって、そのイメージでブラン・ド・ブランは軽やかなはずと思うのは、イメージに引きずられすぎだ。良いシャンパーニュを飲みつけている人なら知っていると思うが、力強かったり、奥深かったりするブラン・ド・ブランはいくらでもある。このGaston Chiquet Blanc de Blancs d’Ay Brutも、豊かな香りと味わいがあり、特に旨味は舌を覆ってずっと楽しませてくれる。
実は、ボトル半分も飲めば大満足の俺だが、少し飲み残していたのに、このレビューを書いていて、思い起こすにそのおいしさをまた味わいたくて、またグラスに注いで飲みながらこれを書いた。それくらい、旨い。価格からは信じられないほどだ。そしてこの旨さは、アイ村のピノ・ノワールのそれにも通じる、アイ村の味わいなのだなと知る。そしてそれこそがGaston Chiquetの表現したかったものであり、ちゃんとそれを実現できているGaston Chiquetの素晴らしさを知った。Special Clubとこれを飲んで、Gaston Chiquetは自分のお気に入りのメゾンの一つになった。