いつかは飲んでみたいと買って置いておいた1本。夏休みになり、どこへ出かけることもないのでこの贅沢がご褒美。
シャンパーニュでドンといえばドン・ペリニヨンが圧倒的知名度を誇るが、シャンパーニュ通の間ではやはり外せない名門ルイナールのトップキュヴェ。何せ世界最古のシャンパーニュメゾンであるルイナールが醸すものだから、無視できない存在。とはいえDom Ruinartは生産量が少ないこともあって、飲む機会はそうない。レストランでもオンリストであることはほとんどない。
シャルドネハウスのプライドを賭けて、無論セパージュはシャルドネ100%。そのうち90%はル・メニルシュールオジェ、アヴィズ、シュイィ、クラマンのコート・デ・ブラン地区のもの。残り10%はシルリィのモンターニュ・ド・ランスからで、すべてがグラン・クリュ。澱とともに9年以上熟成し、リュミアージュ(澱を集める瓶回転)・デゴルジュマン(抜栓)も手作業。ドサージュは4g/ℓのエクストラ・ブリュット。
開栓してグラスに注ぐと、色はいかにもシャルドネらしい、淡いグリーンのヒントを持つ。長期熟成にしては黄色くはなく、淡めの色合い。泡ははつらつとしている。一口飲むと、ちょっとマールのようなブランデー香がし、どっしり目かと思う。
が、すぐにバランスの取れた豊かな花の香りや蜜のヒント、ミネラル豊かな風味が放たれる。特にミネラリティーは、エチケットやミュズレに石灰岩質を削って作ったカーブの模様が刻まれているとおり、このキュヴェの特徴立っているポイント。余韻の長い味わいで、ハーブを練り込んだフレッシュな山羊乳のチーズからトリュフゴーダ、軽めの肉まで取り合わせられる。
とにかくスムーズ。そしてブラン・ド・ブランらしく、酔い心地も快適。しかし、基底にある作りはしっかりしていて、複雑味のある香りと味が、口にするたび伝わってくる。
いいものを飲んだ、という充実感がある。ドンといえばペリニヨン、という連想をしていた人も、これを一度飲めば、ドンといえばルイナールも、と必ず記憶のひと角を占めること間違いないだろう。