トップキュヴェのCuvée Paradisを飲んだのは遥か昔、箱根のオーベルジュに行った時だった。他のどのメゾンとも違う、樽香を伴う深くコクのある香りと味わいは大変印象深かった。しかし、パートナーは軽く華やかな味わいが好きなので、以来Alfred Gratienは選択肢に挙がらず、永く飲むことがなかった。
しかしふと、秋も深まり、味にも深みを欲する季節になって、1人飲み用にスタンダードはどうかと、買ってみた。Cuvée Paradisは普段の1人飲みには贅沢すぎるが、スタンダードならよかろうと。
Alfred Gratien BrutはAlfred Gratienのスタンダードキュヴェ。オーク樽で発酵、3年シュール・リー熟成(澱と共に熟成)される。樽はシャブリで5年以上使用された物を買い受けて使用していて、228ℓの大樽だとか。クラシックな造りで、ドサージュは8~10g/ℓ。
開栓して放たれる香りはパンデピスやアニスなどの重めのもの。もちろん、心地よい深さ。注ぐと泡は豊かで厚い。飲み応えがあり、いかにもAlfred Gratienらしいなと感じる。重いといえば確かに重いのだが、野暮ったくはなく、どこかクリスピー。モートリュフやオリーブとも合う。
エクストラ・ブリュット流行りで軽やか、ともすると物足りないシャンパーニュもあるなか、こうした造りのキュヴェを世に送り出すAlfred Gratienは、シャンパーニュの名醸造手としてこれを守り続けてほしいなと感じた。