癌の放射線治療に伴う味覚障害からの復帰記録 その3


何となく塩味が戻ってきてからは、徐々に食べられる物が増えてきた。数日前には、久しぶりに和定食のような夕飯を用意して、パートナーじょにおと食べた。一緒に食卓につき、同じ物を食べたのは、数ヶ月ぶりのことだ。食べられる物が制限されていると、匂いも気になる場合があり、時間も内容もそれぞれ別で食べていたので、内容はどうということのない食事ではあったが、意義深かった。一緒に食事をするというのは、単なる栄養補給でなく、コミュニケーションであり、体験の共有を積み重ねていくということだから。

何ということはない夕食、塩さば、ほうれん草のお浸し、冷奴、じゃがいもの味噌汁、ご飯。
何ということはない夕食、塩さば、ほうれん草のお浸し、冷奴、じゃがいもの味噌汁、ご飯。

口に何も入っていない時には、相変わらず嫌な味がしている。それを紛らわすのに一番いいのは、緑茶だ。その2で書いたとおり、味覚が今よりも鈍い時、よく鰻茶漬けを食べたものだが、その時に緑茶を使って以降、よく飲むようになった。コーヒーはまだおいしさよりも苦味ばかりが目立つ。甘味の感じ方が鈍いせいか。

ジムにも復帰した。まず、4月の中頃に自重トレーニングを自宅で開始して、下旬にはホームジムで体慣らしをし、今月から通いのジムに3ヶ月ぶりに行く。体重は徐々に戻してきているものの、治療完了後は開始前に比べて8kg減、今はそこから3kg戻したが、やはり全般に筋肉は落ちた。

しかし、気がかりなこともある。昨日、左首、耳の斜め後ろ下付近が微妙に腫れているのに気づいた。初回癌の手術で切除した所とは別だが、再発治療時に放射線は当てた所。ただ、癌の時と違って押さえても痛みや鬱陶しさはない。単なるむくみだといいのだが、とりあえずは10日後に控えている検診で診てもらうことになる。

時々、シリーズ化されたホラー映画の主人公のような気持ちになる。度重なる危機を脱し、後味の悪い夜明けがやってくる。傷だらけになりながらも命を永らえた環境で惨劇の跡を眺めながら、思う。「終わった、しかしこれは本当に終わりなのか」と。これで本当に闘いは終わったのか? その暗い不安は、ゾンビのように、のたりのたりと、隅からひたひた、つきまとうのだ。

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