癌の記録 取り戻す日々


再手術を受けたことを記した日記から、ずいぶん経ってしまった。結論から言うと、経過は順調。

もちろん、元通りにいかないこともある。
今一番気がかりなのは、腰。もう20年近く前、ワークアウトで負荷をかけすぎ、腰椎すべり症と診断され、それ以降稀に、長く立ち続けた時などに腰の痛みや右脚の痺れを感じていたのが、明確に悪くなり、日常的にそうした不具合を感じるようになってしまった。1月から整体に通っているが、一進一退といったところだ。
そして、リンパ節を除去した首。手術痕は突っ張り感があって、それが酷いと、喉が詰まるような感じがする。これは、ストレッチをするよう、医者から言われているが、元通りにはならないだろう。悪化しないようにケアしていくしかない。表面の無感覚については、諦めている。シェーバーを当てる時などに神経を使う。

延び延びになっていた病理検査の結果だが、今月の初めに医師から電話があって、再手術で除去した箇所にはやはり病変部位が含まれていたと。周囲に「染み込んでいる」(微細に細胞が散っている、の意味か)箇所はあるかもしれないが、手術のビデオを見ながら頭頸部外科と病理で検討した結果、さらなる手術の必要はなく、これにて治療は終了で、これからは定期経過観察とのこと。

仕事に復職して、それまで以上に働いているのだが、実は突然疲れから熱を出したことがあった。インフルエンザかと思われたが、結果は陰性。医者には、癌の手術を受けた人がいきなり全開でやったらダメです、と怒られた。

二度の入院の時も、それ以降も、パートナーじょにおは多忙を極めており、出張も多い。いきおい、家事や犬達の世話は俺の分担にならざるを得ず、仕事→家事→仕事→家事で、休みもあるのだかないのだかといった感覚に陥りがち。じょにおが留守の時が多いと、一人の食事も手抜きで、あまりクリエイティビティーを発揮できていない。ジムには復帰したものの、だましだましといったところで、まだ挙げる重量も術前の8割方。

そんな自分の状況に焦れるが、それでも日常を取り戻しつつあることには喜びを感じている。犬達は(多少世話が焼けるところはあるにしろ)かわいくてならないので毎日一緒にいることができて嬉しい。散歩に連れ出して、腰が痛くて脚が痺れる時もあるが、ベッドに寝っぱなしでベージュのカーテンと白い天井しか眺めることのなかった光景とは比較にならない。好きなシャンパーニュも飲んでいるし、車にも乗る。術後直後は大変だった食事も、ほどなく今までどおりの物を食べられるようになり、じょにおと食事を楽しむことができるのも嬉しい。

腰のことや、首のことなど、感覚的に鬱陶しくてしょうがない時もある。そうるすと、なんとなく、老け込んだような気分になり、そうした気分は次々に嫌な気持ちを引き連れてきてしまうのだが、じょにおもただでさえ仕事が忙しいなか、家でも鬱陶しい様子では気が滅入るだろうと、なるべく普通にふるまうようにしている。どうしても、という時は「今日は首が突っ張る」くらいのことは伝えるが。

今朝、犬が空腹過ぎたのか、未明に胃液を吐き、そのせいで休みなのに早起きしてしまったが、ふと台所を見たら、食卓に置いたガラスの花瓶にあたった日光が屈折して虹を作っていた。

虹模様。レインボーフラッグとは上下が違う。
虹模様。レインボーフラッグとは上下が違う。

古来日本では虹は不吉の象徴だったが、今は価値観が違う。それに、レインボーといえばLGBTの象徴ではないか。これはいい験、ということに解釈しておく。そうそう、去年末に参加した交流会をきっかけに、レインボーコミュニティー西東京という団体に、じょにおと共にメンバーとして名を連ねることになった。日常を取り戻しつつ、自分たちは前に進んでもいるのだと、感じられる出来事だ。振り返ってばかりはいられない。

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