東京レインボープライド2017参加レポート


概略

もはや自分にとっては年中行事の東京レインボープライド。LGBTの権利と認知向上をアピールする日本国内最大のイベントだ。1週間に渡り、ワークショップなど様々なイベントがあり、土日のフェスタとパレードで締めくくられる。今回は日曜日のパレードに行ってきた(道路使用許可上、これはデモということになっている)。

まず結論から言うと、今年も歩けてよかった。来場者と行進者は史上最多だったとのこと。来場者約108,000人、行進者は公式5,000人、一部報道6,000人ということになっている。人口2352万にしてウォーク参加者約8万人といわれる台湾プライドなどに比べると人口比では非常に少ないが、それでも年々多くなってきているのは、ここ数年急激にLGBTがメディア等で取り上げられる機会が増えているのと比例している。

諸問題

しかし、長年プライドに参加していると、問題にどうしても目が行ってしまう。全体として意義があり、幸せで楽しい時間を体験したが、そこを見過ごす訳にはいかないので、この日記ではこうして結論の次に早い段階でそのことも記しておく。

まず呆れたのが共同代表理事・杉山文野氏の毎日新聞インタビューでの発言。「マーケットが人権を作る」の中見出しに、「ビジネスにならなければ、カルチャーにもならない。」と来た。人権に対する理解が根本から間違っている。杉山文野氏は、渋谷区の同性パートナーシップ認証制度についてグッドデザイン賞授与の時にお手盛りだとの批判でひと悶着の末受賞を辞退しているが、自分が自分がの押し出し、商売ベースでのものの考え方が目につく。もう一度、自分がやろうとしていることの本質について考えてほしいものだ。

そして、出店ブースの質の問題。パレード会場には様々な団体・企業・国の大使館などがブースを出していたのだが、イスラエル大使館のLGBTフレンドリーを謳っての出店にはいつも批判がある。LGBTの問題は基本的には人権問題。LGBT歓迎ですが紛争は起こします、武力行使の実録がありますという所の出店は果たして適格なのか。
もう一つ、ツイッターで知って愕然としたのが、とある出会い紹介系企業。前からやり取りに監視体制を敷いて性的発言を制限したり、秘密のうちに安心してと言いながらクローゼットであるが故に出会いの少ない人に公的身分証の提出を義務付けたりしていて、やり方がどうかと思うところだったのだが、HIVポジティブの人の参加を「他の人が嫌がるから」と拒否したとか。そのことについて質問されての公式ツイッターでの回答はなんと

双方の希望条件によるマッチングを行っているため、複数の項目を総合的に判断して、役務提供が難しいと判断した場合には入会をお断わりする場合がありますが、費用を徴収しても役務が提供できないということを防止することが目的です。

と。「お前なんぞ金払っても無駄、紹介なんてできないから最初からやめとけ」と実質排除の正当化。ゾッとするとしか言いようがない。こういう姿勢の所の出店についても、今後しっかり精査してほしいものだ。

さて、気分のよくない話はこれくらいにして、ここからはパレード当日の模様。今年もパートナーじょにおと参加。今回は高知から友人のKOHSUKEも来てくれて、一緒に行動した。

東京レインボープライド2017会場の様子

代々木公園イベント広場に設けられた東京レインボープライドのゲート。
代々木公園イベント広場に設けられた東京レインボープライドのゲート。

ブースも来場者も史上最多とのことで、大変な賑わい。例年以上に盛り上がりを見せていた。ブースが多く、ざっと見て廻る程度で、個々のブースレポートはしきれなかったが、物品販売、大使館による国の案内、写真撮影、就職相談などなど多岐にわたっていた。やはり共同理事の意向かビジネスチャンスを求める企業参加が多かったように思われる。IBMのブースでは無料の適性診断などが行われており、列をなしていた。

イベント広場内ブースは人でごった返していた。
イベント広場内ブースは人でごった返していた。
パノラマで見た会場。
パノラマで見た会場。
にじはちという巨大なフラワーインスタレーション。
にじはちという巨大なフラワーインスタレーション。

ある程度、商業ベースに乗るのは大事。どうしたってお金はかかるし、企業のCSRアピールによってLGBTの認知度が増し、理解促進にもつながる。なので、企業がお金を出してくるのはそれはそれで良いことだ。しかし、潜在的マーケットの青田買いとしてLGBTにアプローチするというのは所詮カネ目当てでしかなく、本来これは人権意識が根底にあって、そこを本当に促進するものかどうか、我々参加者は注意深く見守り、選択していかねばならないと感じさせた。

我々は同性婚人権救済申立の申立人なので、そのブースに立ち寄り、うちわにメッセージを書いて持つことにした。うちわはカンパ制。もちろん余分にカンパ。

ブースで。撮影はKOHSUKE。
ブースで。撮影はKOHSUKE。

パレード

街なかを歩くパレードだが、23出走するフロートのうち、我々3人は「今すぐ同性婚法制化を!」というテーマのところで歩いた。

配られたブルーの風船を手に手に、出発を待って集合する人達。
配られたブルーの風船を手に手に、出発を待って集合する人達。
向かいにも他のフロートの整列。
向かいにも他のフロートの整列。

整列して待つこと3、40分、いよいよパレードがスタート。パレードはNHK横を出発し、公園通りを渋谷駅方面へ下る。渋谷のスクランブル交差点を左折して明治通りへ抜け、神宮前から原宿駅方面へ坂を登り、代々木公園に帰ってくるといういつものコース。

ところで、会場にいるはずだったのに会えない友人がいて、気にかかっていたのだが、隊列が渋谷駅前を曲がろうとして、いた! なんとプレスだったのだ。これはいい機会と、写真を撮ってもらった。

渋谷駅前で写真を撮るなんてそうそうない。
渋谷駅前で写真を撮るなんてそうそうない。
因みに前夜ここを通りがかった時の写真。青矢印の方へパレードは歩く。
因みに前夜ここを通りがかった時の写真。青矢印の方へパレードは歩く。

同性婚法制化の集団は、はっきり言って地味。音楽を流したりパフォーマーが乗ったりする本当の「フロート」はおろか、先導車もないので、「フロート」とは言えないかもしれない。まあしかし、こうしたテーマで歩くことも重要。参加していたレズビアンの集団が、「同性婚! 同性婚!」とシュプレヒコールを上げて、盛り上げてくれて助かった。初参加のKOHSUKEもすっかり馴染んで声を上げていて、楽しんだようだ。

ところで今年は例年よりもやや涼しく、午前中は雲が出たりしていたので、暑さに弱いうちの犬達も参加できるかなと思ったが、予報では25℃を超えてくる予想だったので、諦めた。来年はカートでも買って犬達を連れて行くか、などという話もじょにおとしつつ。

エピローグ

そんな訳で今年も無事歩けた。パートナーじょにおはこうした行動に対して常に協力的・積極的で、そうした人をパートナーに持てたというのは、本当にありがたく、幸運なことと思う。

会場を見ていていつも思うのは、普段クラブだのバーだので幅を利かせているゲイを考えると、比率的に明らかに他のセクシュアリティーの人々の方がより多く、問題意識を持って参加し、また、行動力がある。またチクっと言わせてもらうと、普段リア充だのシャイニーだの標榜している人々は、一体何をリアルとして生きているのか、と思う。去年と同じことの繰り返しになるので、その辺は去年のパレードレポートの日記を読んでもらうとして、ゲイはもっともっと表に出てきてほしい。ともかくも、参加していた人々は皆輝いていて、その存在一人一人が社会を良い方向に変えてゆく原動力なのだなあと、あらためて感じられた。

そして、個人的には、一般社会においては、性的指向のこととは別として、人と気が合うとか、分かり合えるとかいうことはむしろほとんどいないと感じられることが多く、時々殺伐とした排他的思考に陥りそうになるのだが、こうした場に身を置くと、人々の融和とか愛を信じられる気分になる、貴重な体験なのだった。rainbow