同性婚人権救済の申立人説明会に参加


昨日、同性婚人権救済の申立人に対する説明会があって、パートナーじょにおと共に参加してきた。説明会は複数都市で開かれ、我々が参加したのは東京での説明会。

雨の降る中、会場のirodoriカフェまで向かうと、もう結構な人で、開始時刻にはいっぱいに。

会場のirodoriカフェ。
会場のirodoriカフェ。

説明会概要

1時間の説明会だったが、経過説明としては、2015年7月7日に申立を開始し、現在まだ待ちの状態で、待機状態のままでは状況が分かりにくく、説明に至った模様。ただし、動きがまったくない訳ではなく、来月には日弁連の法律論のヒアリングが予定されている。ただし、ヒアリングや人権救済の勧告を行うかどうかの決定は、裁判のように公開制度ではなく、弁護団としてももどかしさを感じることはあるようだ。

説明によると、人権救済は、一般に時間がかかるものらしい。石原慎太郎のヘイト発言に対する警告は発言から警告まで3年(!)を要したという一例が紹介されていた。

話はもどって、同性婚人権救済申立についてだが、その間弁護団は何をしていたかというと、これもまた何もしていなかった訳ではない。社会学、家族法、憲法学者や、アメリカでの同性婚訴訟での立役者となったエヴァン・ウォルフソン弁護士との意見交換会、勉強会などを開く傍ら、人権救済申立を社会に周知する活動として、講演会、各種メディアへの出演・寄稿などを行ってきた。
それらはすべて無償ボランティアで行われており、頭が下がる思いだ。

質疑応答

昨日の説明会では上記の概要が紹介され、内容は簡潔だったので後は質疑応答の時間と、弁護団のメンバー紹介の時間が設けられた。主な質問と回答の要旨は以下のようなもの(※あくまで俺の聞き取りによる簡略化した要旨なので、ニュアンスの違い等はご容赦):

Q1申立期日までに申立をしなかった人の追加参加は可能かA1申立人が多くいるなか手続きが煩雑になるので、遠慮してもらっているが、署名やプロモーションなどで協力してもらえるとありがたい
Q2同性婚成立の一番のハードルは? 予想としてはいつ頃かA2具体的な期日予想は難しい。ハードルとしては反対の人達をどう説得するか。最高裁判決は1つのパターンだし、世論が形成されてゆくのも1つのパターンで、両方を目指してやっていきたい
Q3日弁連の人権救済勧告(が出たとしてその)後、裁判にするのかA3検討中。提案やアイディアを寄せてほしい
Q4性別適合手術を受けていないトランスジェンダーで同性婚申立人になった。戸籍変更しないで結婚したく、同性婚は現在の手術を要件とする戸籍変更よりもハードルが低いか?A4同性婚は性別適合手術を戸籍変更の要件とすることを変更するよりもハードルは低いかもしれない。ちなみに申立人のうち4、50人はトランスジェンダー
Q5同性婚よりも婚姻の平等という言い方が適切な場合があるが、今後も同性婚人権救済弁護団という名称なのか?A5勧告が出て完了するまではこの名称だが、その後については考えていく。

弁護団のメンバーには、Xジェンダー(出生時の性別のいずれでもないという立場の人)もいて、興味深かった。LGBTとは一口に言っても、当事者にとってさえ他の多様なジェンダーやセクシュアリティーについては実感しにくいので、そうした人達の存在を実際に感じることは意義深い。

カンパ

説明会中カンパのお願いがあり、俺とじょにおはまず会開始前に些額ながらカンパし、説明会が終わった後、書籍が売られていたので数冊購入し、お釣りもカンパした。

購入した本。
購入した本。

個人的には、ボランティアは無償である必要はないと思っている。何事もお金はかかるのだし、お金が回って初めてスムーズに運ぶこともあるからだ。また、多くの無償ボランティアは持ち出しを余儀なくされていて、無償という名の自己犠牲のもとに物事を前進させるというのはおかしな気がする。

人権救済申立については、あくまで司法の場での申立であり、中立を維持するためには利権が絡まない方がよいのかもしれないが(他のLGBT活動については、「そんなのは自分のライフプランとして自分でやってくれ」と思うようなのをクラウドファンディングに頼ったり、あるいは会計が不明瞭だったりすることも多々あり、資金拠出を募ってそうしたゴタゴタに巻き込まれるのは賢明ではない)、今後例えば同性婚(平等婚)の法制化に向けての、もっと進んだリーガルアクションを起こすことになれば、その支援のための基金などはあってもよいのではないかとも思う。

所感

実は人権救済については、個人的に少し諦観モードに入っていた。多々誤解がありながらもLGBTという言葉を一般のメディアで目にする割には膠着しているなあ、と。実際、申立から1年半以上が経ってヒアリングもまだという段階ではあって、司法のスローモー加減は弁護士の数が増えても相変わらずだなと思う節もあるのだが、それでも説明を聞いて、当事者がただ手をこまねいて待っている訳ではないというのが分かったし、また、説明を聞きに来た実際の人々と場を共有して、勇気づけられた。

今回、人の顔を直に見られたというのは、大きな気がする。「こういう人達が実際いる」と実感するのは大事なこと。あとは、顔つき。会場に集った申立人達は皆意志を持った素敵な顔つきの人達だったし、弁護団各人も、「ああこれなら安心」と思える、すがすがしい表情の人達で、功名心から何かやらかしたいと思っている某団体とは違う。

1つ、ゲイとしての立場から見て気になったこと。それは、集まった人の中でのゲイの比率が低いこと。なんだかんだ言って男性優遇社会では、ゲイはそのまま何となく暮らしていこうと思えば不便はあるとしても暮らしていけてしまっているからなのか、それともセックスその他が得られればいいと思っているのか。それに、クラブに出演したことのある俺の立場からすると、日頃クラブパーティーだイベントだと盛んな活動をしている人達の層とは異なっているようにも見えた。いずれにせよ、ゲイの関心の低さは、これもハードルの1つであると思えた。

展望

展望については、正直、いまもって見えにくい状況ではある。が、台湾では最高裁で同性婚について審議中であることのように、同性婚(平等婚)の潮流は、アジアにも寄せている。信念を持ち、また、事実として婚姻を求める人がいるということを様々に訴えることが重要(事実が法律を動かす。これは弁護団からもその言葉があった。申立人のメッセージはそれを伝える1つの手段で、近々に我々も投稿する予定)と感じた。