同性婚人権救済申立の申立人として


既に多くの報道にあるように、ついにアメリカは全米での同性婚成立を法制度上認めた。1969年6月28日にニューヨークのゲイバーStonewall Innで起こった騒乱から46年を経ての実現。同性同士でも結婚できるようになったとの意義は、個人の尊厳に基づく婚姻の平等性が認められたという意義でもある。その判決文は論理的にして美文。歴史的判決になるだけに、アメリカの英知が尽くされたといえる。

ホワイトハウスも6色レインボーにライトアップされた。こんな日が来るとは!
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日本でも同性婚を実現しようという動きがある。しかし性急な団体訴訟などは戦略的にあまり賢い手といえない。日本には「時期尚早」という、理由にならない理由で訴えを却下してきた判決もあるからだ。

ではどうするか。法制度の実現を弁護士会から政府に訴えかける人権救済申立という手がある。現在そのため、同性婚人権救済弁護団が奮闘している。(同性婚人権救済申立についてのウェブサイトはこちら同性婚人権救済弁護団のツイッターアカウントはこちら

人権救済申立とは

人権救済とは,日本弁護士連合会(略して日弁連といいます)が,人権が侵害されているケースについて,調査をし,「警告」「勧告」「要望」などの必要な措置をとることです。この人権救済を日弁連に対して申し立てることを人権救済申立といいます。

(同性婚人権救済弁護団の上記ウェブサイトより引用)

既に第一次申立人募集は締め切られたが、現在約450人の申立人がいるそうで、俺とパートナーじょにおは、この申立人のうちの2人になった。申立にあたっては陳述書を提出することが必要で、これは個人分については公開してよいとの回答を弁護団からいただいているので、俺の陳述書をここに紹介したい。全文はこの後PDFで掲載するが、概要としては次の5項目を陳述した。

    1. あなたのセクシュアリティは?
    2. 同性パートナーの有無
    3. あなたにとって、同性パートナーとはどんな存在ですか?
    4. 同性を好きになったり同性パートナーとの生活で不便に思うこと・思ったことはありますか?
    5. 同性婚の法整備が進む事への期待は何ですか?
    6. その他、何でもご自由にお書き下さい。

 

6.については、自分の思いや訴えを書くことができる項目で、このように書いた。

結婚を望む人が結婚によって幸せになったからといって、誰かの幸せを奪う訳ではありません。性的少数者が望む相手と合意で結婚することは、誰の脅威にもなりません。無論、同性婚ができたのだから同性と結婚しろと異性愛の人が強制される訳でもありません。

しかし、ゲイやレズビアンその他性的少数者が世間体をはばかり、あるいは家系を絶やすなというプレッシャー上から異性愛の結婚を強制されてきたことはありました。それは、現行日本国憲法の保障する婚姻の自由が、いまだ結婚をする当事者の意思ではどうにもならない家制度や社会的圧迫によって阻害されてきたものだと感じます。同性婚を認めることこそがむしろ憲法の趣旨に沿っているとさえいえます。
同性婚を認める法律が整備されれば、婚姻に関する法律が、封建的家制度からの解放を実現し、個人の尊厳と(ゲイであれ、レズビアンであれ、その他性的少数者であれ)両性の本質的平等に立脚して制定される十全なものとなるからです。

今、世界は同性婚を実現し、推し進める傾向にあります。この流れを止めることはできません。それは、ようやく21 世紀になって、今まで見過ごされてきた権利の取り扱い上の不平等が解消されてきつつあるという、いわば人権の最後の問題が解決されつつあるということなのです。こうした人権問題について、先進国として日本は率先して取り組むべきです。
真に人のためになる法制度の実現として、同性婚を認める法律が制定されることを、パートナーとの結婚を望む個人の立場からも、社会の一員としての立場からも、切実に願っています。

PDF:同性婚人権救済申立陳述書全文

俺とじょにおは出会って以来、自分達なりのパートナーシップを築き上げてきた。じょにおは言う。俺と出会ったから家族にもカムアウトできたのだと。そうでなければのらりくらりとその問題をかわして生きていただろうと。しかし、今ではじょにおの親族にも俺は迎え入れられ、夫夫(ふうふ)同然の生活をしている。

しかし、いくら「同然の」といっても、法制度上認められなければ、俺達は同居している他人同士にすぎない。同居でさえ、住民票上ではそれぞれが世帯主の別世帯だ。
俺達は結婚を望んでいる。そろそろ同居して6年になるが、その年月を思いだけで繋いできた。しかし、思いだけではどうにもならないことも多々ある。思いが繋がっているならいいではないかと言う人もいるかもしれないが、法制度上、つまり社会生活上その関係が認証されているかいないかでは大きな違いがある。
個々の制度上・社会生活上の不便を個々に挙げるのは上記のPDF4.を見てもらうとして、結婚するしないはカップル当人達同士の自由だが、望めばできることと望んでもできないのとでは、天と地ほどの違いがある。俺達は望んでいて、したいのだ。

俺達は本気だ。今この国は政治と民意が大きく乖離していて、理想とは程遠い。しかし、この婚姻の平等性については、それを夢見るだけでなく実現することに向けて、行動を開始した。結実を信じている。