Deutz Demi Secを飲みながら何故シャンパーニュが好きなのか考えた


時々シャンパーニュを買うショップからの案内で、シャンパーニュを飲み始めるきっかけになったDeutzのDemi Secが「これはお買い得!」という値段で出ていて、即座に3本買った。

床に置くのも何だが、箱で届いて開梱してすぐ撮ったので。この後すぐセラーに直行。
床に置くのも何だが、箱で届いて開梱してすぐ撮ったので。この後すぐセラーに直行。

届いたのは日曜日だったのだが、ゆうべじょにおが「飲もうか」と言う。うちでは買ってから少なくとも1週間くらいは置いておいて落ち着かせるので、珍しいことだ。この間のBenoît Lahiyeは、買って4、5ヶ月は置いておいたように思う。(うちのセラーは長期熟成用のセラーではないので、買って置いておいても半年くらいで飲んでしまう程度しか置かないのではあるが)

昨日はじょにおは遅くまで仕事で、疲れていた自分自身を労いたい気持ちだっただろうところへ持ってきて、我が家は2人とも甘党で、「これはおいしい」と思ったこれを買ったところだから飲みたいんだな、じゃあ開けるか、と開栓。ここは乗らない手はない、と、じょにおのせいにして。(笑)
「あの時飲んだ印象は本当は今飲むとどうだったのか確かめたいね」と最近2人して言っていたところでこれが安価な値段で売りに出たので、実はそういう意味でも良いタイミングだった。それにしても週初めからシャンパーニュとは贅沢なことだ。

こんな色だったっけな、と思いながら緑の留め金を緩める。Deutzは首の細いボトルがエレガント。
こんな色だったっけな、と思いながら緑の留め金を緩める。ちなみにロゼは留め金がピンクだった。Deutzは首の細いボトルがエレガント。
甘口なので、ダックワーズなどの軽いお菓子とともに。
甘口なので、ダックワーズなどの軽いお菓子とともに。

菓子類は気に入りのケーキショップで「たまたま」買っておいたもの。(笑)

さて、Deutz Demi Secをあらためて味わってみる。やはり素晴らしい印象は変わらない。きめ細かくクリーミーな泡、フレッシュフルーツの香りから始まり、野薔薇と蜜のような香りへ移って陶然とするうちに、さらに森の奥へと誘われる香りの変化の幅のダイナミックさは、Deutz Demi Secならでは。ああ、やっぱりこれはおいしかったねと納得した。

辛口のシャンパーニュ好きの人にはDemi Secはモッタリしていると感じられるかもしれないが、Demi SecやDouxはそもそも食事と共に味わわれるBrut系のシャンパーニュとは別、この液体自体の重みと甘味をゆったり楽しむべき、いわば大人のデザートなのだ。シャンパーニュは歴史的にはデザートワインとして現れ、その後補糖の量を減らして食前や食中にも楽しめる飲み物として発達していったものだから、今は生産量的に脇役の甘口シャンパーニュは、シャンパーニュの本質を辿れるという意味ではむしろ成り立ちを知る王道とも言える。

◇ ◇ ◇

で、ゆったりとシャンパーニュを楽しみながら、何故シャンパーニュが好きなのか考えた。何事も好きになるかどうかは感覚や直感で、理由というのは内包される付随物や、ことによると結果でしかないのだが。

◎まず、気分を華やがせるとともに優しい気持ちにさせてくれる。キャップシールをぐるりと開け、留め金を緩め、コルクを抜くというあの動作は一種の儀式で、その世界に入り込こませることで、物憂い心配事や世間の塵芥(ちりあくた)を取り払い、時間を特別なものにしてくれる。立ち上る泡、ゆらめく液面は見ていて飽きず、その優雅な時間の流れを感じさせてくれる。
シャンパーニュは嬉しいことがあった時にはより高揚感をもたらしてくれるし、リラックスしたい時にはシルキーなタッチで寄り添ってくれる。疲れてしまったり、ちょっと悲しいことでしみじみした気分だったりする時にはそれを癒してくれる。悲喜こもごも両方のシチュエーションに合うこと、これは他のワインには成せないことだ。

◎味と香りの豊富さもポイント。ワイン一般ももちろんだが、シャンパーニュの味と香りは作り手によってこうも違うものなのかと思わせる。何故発酵香と花とフルーツと蜜とその他の香りの要素が同居し得るのか? 酸味、甘味、苦味、ミネラル感のバランスの妙。これらは、分析しきれないものだが、要素要素が拾えると楽しい。少し香道などに似ているのかもしれない。色も違う。一般に「シャンパーニュゴールド」というが、ごく浅いクリーム色、緑がかったもの、オレンジを帯びたもの、蜜のように濃い黄色など、色にも様々なバリエーションがあって、これは泡立ちとともに目を楽しませてくれる。

◎食前にも、食事を通じても、チーズとともにでも、その後でも楽しめる。もちろんフランス料理だけでなく、和洋中エスニック(物によるが。また組み合わせもあるが)と合う酒はなかなかない。

◎一種の高貴さ。俺もじょにおもシャンパーニュを飲む時にステータスで飲んでいるのではない。もちろん、シャンパーニュに贅沢なイメージがあるのは否定しないし、シャンパーニュのそうしたイメージを逆に他高級製品の演出に用いる広告なども展開されているのは事実。

Jaguar XJシリーズの最高級車種Ultimateの公式ギャラリー写真。最初PommeryのRoyal Brutが使われていて「それはちょっと…」と思っていたら、同種の指摘があったのか、Dom Perignonに差し替えられた。(笑)それもどうかと思うが…。
Jaguar XJシリーズの最高級車種Ultimateの公式ギャラリー写真。最初PommeryのRoyal Brutが使われていて「それはちょっと…」と思っていたら、同種の指摘があったのか、Dom Perignonに差し替えられた。(笑)それもどうかと思うが…。

しかしそれは、シャンパーニュメゾンの由緒とか、真摯な物造りからシャンパーニュが高級品として呼び習わされることに値することから来た実体あるものであって、安易なブランディングの空疎な容れ物ではない。だからこそ自分のライフスタイルとして取り入れる価値があるのだ。もちろん例外もあるが。ともあれ、本物に触れるのは、それを選ぶ自分の精神が生きていれば、自分を高めることにもなる。そして、シャンパーニュの場合、真摯な物造りをしている人を尊敬しつつ、そのスピリットに触れることができるということでもあるのだ。シャンパーニュ代は、飲み物への代価のみならず、そうしたことを学ぶ対価でもある。(と巧く正当化 笑)

シャンパーニュには人生を楽しむエッセンスが詰まっているように思う。あまり試す機会がなかった人には、是非試してみてほしいと思う。きっと新たな発見があるはずだ。自分の身の回りの人は、シャンパーニュは飲む機会があれば飲むし、味は好きだけれど思い入れはさほどない、という人が多いようで、残念だ。この素晴らしさの分かる人達と、気の利いた「これは」と思える1本を持ち寄って、一緒に楽しめる機会があれば素晴らしいのに、当面はうちでじょにおと楽しむことになりそうだ。

さて、来週はじょにおと同居して丸3年の記念日。うしし…。それにしても最近よくシャンパーニュを飲んでいる。元来そう酒に強い方ではないから(具合は悪くはならないがすぐ真っ赤になる)、少し控えるか。