緊急脱出(未遂)


ジムに寄らず会社からまっすぐに帰ってきた金曜日。食事を終えて、行こうかどうしようか迷っているうちに何となく時間が中途半端になってしまい、今日は家にいようと決めて、のんびり音楽をダウンロードなどしていると、開け放っておいた書斎のドアの向こう、リビングの方から何やらじょにおの険しい声。

「ダメ! 絶対ダメ!!」

何事…?

すると、電話を切ったじょにおが書斎にやってきて、「緊急事態です」と言う。どうやら、近所に住んでいるじょにおのお母さんが「今マンションの下に来てるんだけど、これから寄る」と言っているらしい。親戚のおじさん・おばさんが遊びに来ていて、食事の帰り道に通りかかったのだとか。うーむ。

じょにおはそう遠くないうちにカムアウトするつもりらしいが、今のところまだ両親にはカムアウトしていない。そんなところでばっちり2人暮らし仕様になっていて、「パートナー」(俺)がのっそり現れるというシチュエーションは、リラックスした金曜日の夜にはあまりふさわしくない光景。 そこで急遽出かけることにする。マンションはオートロックになっているので、じょにおのお母さん達はすぐには上がってこれないが、鉢合わせしてはまずいので、ここはとりあえず非常階段で。(笑)しかし、家にじょにおのお母さん達が来ている間どうやって時間をつぶそうか。

そこで、困ったときの近所のあべお頼みで、あべおに電話をかけ、かくかくしかじかで、時間をつぶすのを付き合ってくれと頼み、ハンバーガーショップで落ち合うことに。マンションから出ると、周りにじょにおのお母さんおよびその親戚の姿はまだ見えず。

そこで、ハンバーガーショップに行く旨パートナーにメールを打っていると、じょにおから電話。聞くと、じょにおのお母さんが来るのは中止になったとか。どうやら不機嫌な息子の 声を聞いて、突然の訪問は諦めたらしい。なんだ……。そしてじょにおも外に出て来たので、あべおは呼び出してしまったし、約束どおりハンバーガーショップに 行って、あべおと落ち合った。

俺としては、カムアウトするならなるべく早くしてしまった方がいいと思っているし、まあ立場を説明するシチュエーションになったらなったで、案外(?)肝は据わっているのでOKなのだが、まあ順序としてはじょにおなりの段取りがあることだし、家が近所で交流もあるところで突然親が混乱すると、何かと不便も生じるだろうから、今回緊急脱出はOKだったわけだが、そのうちじょにおのお母さんともご対面ということになるだろうか。

じょにおが言うには、家族と親しい間柄の複 数の人には以前にカムアウトしていて事情は知っているし、弟もこうして同じ屋根の下生活しているわけだから、いざとなると援護射撃は得られるだろうし、言うつもりだとのことなので、そう遠からずどうにかなるものだろうが、非常階段を下りながら、何となくスリルを楽しんでしまった。(笑)