音楽レビュー Phil Collins


Going Back (2010)


(★★☆☆☆ 星2つ)

その名の通り昔を振り返ったアルバム。モータウン時代のカバー集で、アルバムジャケットもPhil Collinsの少年時代のもの。ボーカリストでありドラマーである彼、一発目からあのドタドタ・バタバタしたPhil Collinsならではのドラムリフが聴こえてきて、「ああ、Phil Collinsらしい」とは思う。思うのだが、その後に続く音楽はいずれもあまりに懐古趣味すぎて、「Phil Collinsよ、お前もか」と、オリジナル制作を捨てて昔の財産を掘り起こしてばかりいる昨今の音楽シーンの不毛を感じ、悲しくなる。

聴くところによると、Phil Collinsは右耳の聴力を2000年頃に失っているようだ。昔を懐かしむのも無理もない、とも思うのだが、音楽がスタイルを含めて前進しなくなったものを作品として出されると、本当に悲しい。収録されている楽曲自体はStevie Wonderの名曲”Never Dreamed You’d Leave In Summer”など美しいものもあるのだが、いかんせん、後ろ向きな姿勢が残念だ。