音楽レビュー Narada Michael Walden


Evolution (2015)


(★★☆☆☆ 星2つ)



前作”Thunder”に失望しながらもまだNaradaの輝きを諦めきれず、去年出ていたアルバムを聴いてみた。かつてのポップで明るい感じ、ダンサブルなNaradaサウンドの片鱗は窺えるが、音自体が冴えない。今時なら家でPC一台で作る人でももう少しスタイリッシュなサウンドを創れるだろう。まるでラフのデモテープのような音なのだ。

これを誰か別の歌い手に提供してやってくれたら、そしてアレンジし直して録音にも手をかけたら、まったく評価は違っていたかもしれない。ソングライティングの腕は鈍っていないようだ。日本のシンガーソングライターでも、自分でやらずに他人への曲提供に徹していたらいいのに、下手さと自己陶酔のデモンストレーションが酷くて痛々しい人達がいる。Naradaの歌はそこまで酷くはないにせよ、やはり超一流の歌い手がゴマンといるUSのエンターテイメント界では厳しいのではないか。

これをセルフレーベルから出すに至った経緯はどういうことなのだろうかとか、音楽プロデューサーとアーティストの棲み分けとはとか、聴くにつけて色々考えてしまって、どうにも楽しめなかった。(2016/3/14 記)

Thunder (2013)


(★★☆☆☆ 星2つ)

あの名プロデューサーNarada Michael Waldenが自らアルバムを(今頃になって)出していたと知って、あわてて聴いてみた。が、結果、様々な疑問符が頭に浮かんだものだった。

まず、サウンドスタイル。R&Bでもなくポップでもなく、ロック。そしてロックが問題なのではなく、音が凡庸なのが問題。かつてあのAretha Franklinにアルバム”Who’s Zoomin’ Who?”で嫌がるロックを演らせたくらいだから、ロックがこの人の本質なのかもしれない。
が、有名アーティストを数々プロデュースし世に送り出されたヒットアルバム達は、こんな月並みなロックだっただろうか?と。ゲストシンガーにかつての名アーティストNikita Germaineを迎えた1曲が、かろうじてかつての華やかなプロデューサー業を思い起こさせるが。

そして歌のクオリティー。かなりミックスでカバーして聴くに堪えるレベルに何とか持ち上げている印象。積極的に聴きたくなるような歌唱ではない。自分で演る意味は何だったのか?と。

して見たところ、これは自らのレーベル設立の第1弾アルバムだったようだ。なるほど。
にしても、の出来なのだ。かつてのNaradaサウンドを愛していた人には失望だろう。まあもともと、派手な仕事をしていた一方で、アーティストを食いつぶしてしまうような失敗作もあって(UKソウルの星Mica Parisがアメリカ進出を目論んだアルバム”Whisper A Prayer”などがその例だ)、功罪相半ばする人だなあとは思っていたが、やりたいことがどうにも謎なこのアルバムリリース。ただ、やろうとするその意気、音楽で長年のキャリアを築き上げた偉業には敬意を表したい。(2014/9/12 記)