音楽レビュー Martha Wash


Something Good (2013)


(★★★☆☆ 星3つ)

パワフルな歌声で人気のハウス・ディーバ、なんと20年ぶりのアルバム。しかも、ハウスやダンスではなく、R&B/ソウルでもなく、ポップな曲調の。音楽のレビューコーナーでMartha WashをHouse/Dance/Electroでなく、Rock/Pop/Othersに分類することになろうとは。そして収録曲数はわずか8曲。これだけだと意図が見えず、「???」と疑問符が頭に浮かぶ。アルバムは自身のレーベル、Purple Rose Recordsからリリースされている。

どうやらハウス・ディーバというのは、このMartha Washのように、ハウスミュージック界では相当メジャーな人でも、自身のアルバムをリリースするのが困難なようだ。昔はいくつかシングルが出るとアルバムも出ていたが、最近ではフィーチャリングボーカリストとしてあちこちに出没しても、まとまって聴く機会がある人は非常に少ない。ダンス・ミュージックではボーカリストが軽視されているのだろうか?

それはそうと、このアルバム。出だしの1曲目”Alright”は、まったくMartha Washらしくない。まるでどこかのUK女性アーティストが軽く吹き込んだような感じで、言われなければMartha Washとは気づかないだろう。曲のアレンジも凡庸。続く曲で、ああ、Martha Washなんだっけ、と思い直す。素直でポジティビティにあふれた曲調であるのは救い。そして、声もいい。しかし、迫力が足りない。ここからシングルカットしてリミックスでクラブヒットを狙うとしても、あのupliftingな感じになるのかどうか。20年前のセルフタイトルドアルバムが珠玉のダンスアルバムだっただけに、このアルバムには欲求不満を感じる。(2013/2/5 記)