音楽レビュー Laura Mvula


The Dreaming Room (2016)


(★★★☆☆ 星3つ)




とてもコンセプチュアルで難しい。才能があることに文句はない。ゴシック音楽やhymnを思わせるようなコーラスワークは、Queenの”Bohemian Rhapsody”のよう。深く沈みこむ音楽はUKならでは。USのアーティストではこうは行かないだろう。人の神経を逆なでするようなアクは、例えばEnyaやBjorkのような(Enyaの音楽は清らかだの癒やしだのと言われているが、俺はあれは根底にものすごいアクが潜んでいて、とてもヒーリングなどとはほど遠いものだと思っている)強い癖の音楽が好きなら琴線に響くかもしれない。

このアーティストの音楽を聴いてみようと思ったきっかけは、このアルバムに収録されている”Overcome”がNile Rogersをフィーチャーしていたからだ。ギターリフは確かにChicのNile Rogersそのものだし、Laura MvulaとNile Rogersの個性のぶつかり合いがあるのだが、一歩引いてみると、相乗効果は疑問で、そのフィーチャーが果たして意義あるだったのかどうか、分からない。ギターを弾く人がたまたまNile Rogersだったという感じだ。

いずれにせよ、Laura Mvulaはブラックアーティストではあるが、R&Bの範疇の人ではない。歌声は、歌というよりは、その音楽を実現する手段としての楽器のようだ。実験的で、攻撃的で、孤高で、果敢な音楽を創り出している。しかしいずれにしろ、少なくとも自分には、その声質や歌い方を含め、自分の好みとはほど遠かった。(2016/9/7 記)