音楽レビュー Howard Jones


Engage (2015)


(★★★☆☆ 星3つ)




Howard Jonesに対する俺のイメージは1984年のデビューアルバム”Human’s Lib”で止まっている。懐かしい名前だなと思ったが、実は数年ごとにアルバムを発表し続けていて、これは第11作目のスタジオアルバムのようだ(1997年にアジアだけで発売されたアルバム”Angels & Lovers”を含む)。

アルバムは2枚に分かれているバージョン(といってもダウンロード時代には『枚』という概念は曖昧だが)もあるようだが、聴いたのは1曲目が37分を超すcontinuous mixのタイトルソングから始まる9曲のもの。80年代独特のポップすぎるポップのイメージのままだと、ずいぶん内省的でコンセプチュアルであり、戸惑う。

あとはいかにもお得意の、全てを一人で作り上げたデジタルポップな曲が「ああ、やっぱりHoward Jonesだ」と思わせるが、この時代になってもハウスに色気を示さず、独自の打ち込みエレクトロポップをやっているのは、潔さを感じる。その辺りは中途半端なリミックスで興を削ぎ、オリジナルの時代遅れ感で郷愁を誘うPet Shop Boysとは違うところだ。

しかしこうしてあらためてセルフプロデュース・all-by-myselfミュージックを聴いて思うのは、それは個性という価値であると同時に、殻を破ることの困難であるということ。俺自身、音楽を作ってみたり、リミックスをしてみたりしても、自分のイメージをそのままアウトプットに結びつけるのがその方式で楽だと思う反面、やはりバイブレーションは生み出されにくいのだなと感じる。その一方で、孤独に向き合うことで初めて形になることもあり、Howard Jonesは孤独に勝利した人、ということができるだろう。一般的人気に結びつくかというセールス的なことは別としても、立派にアーティストなのだ。(2015/3/30 記)