音楽レビュー Christopher Cross


Secret Ladder (2014)


(★★★★★ 星5つ)




2011年に下記のDoctor Faithが出た時には復活を喜んだ。そして3年の後にまたアルバムが出たことで、あの復活は一過性のものでなく、Christopher Crossがまた音楽を創り始めた第2期に入ったということができる。

さて、このSecret Ladderだが、作り込みに意気込みを感じる。というのはオフィシャルサイトに歌詞が全部掲載されていて、作品の内容をより詳しく伝えようとしているのが窺えるからだ。

そしてその歌詞はなかなかに辛辣なものが含まれる。その傾向は前作でも感じられたが、人生の深みを感じさせる年齢ならではのものがある。それが爽やかで清冽なCCサウンドに乗せられる時、世界は完成する。

そのサウンドだが、CCスタイルは確立されており、無駄のない、しかし痩せていないアコースティックな構成は衰えを知らないボーカルとともに白眉。こうした大人のポップサウンドをいつまでも届けてほしい。そしてCCを知らない人には、是非聴いて良さを知ってほしい。(2015/6/9 記)

Doctor Faith (2011)


(★★★★★ 星5つ)

オリジナルスタジオアルバムとしては1998年の”Walking In Avalon”以来13年ぶり(クリスマスアルバムを除く)。中低域ではさすがに歳月を経たなと思う声質のところがあるが、相変わらずの透明感あふれる高音は健在で、身震いするほど美しい。

デビューしてすぐのあまりにも大きな成功に、以降は苦労したことだろう。曲が作れなくて抑うつ状態になったこともあると聞く。このアルバムにもそのような複雑さは現れていて、髪で顔の見えない女性のジャケットも少し不安を抱かせるし、音は爽やかだが、曲は意味深長で、曲名からして、”Still I Resist”、”Poor Man’s Ecstasy”、”Help Me Cry”など。哀愁ただよう透明感が切なく響く。それでも新しい音が届いたことは、嬉しいことだ。

The Café Carlyle Sessions (2008)


(★★★★★ 星5つ)

アコースティックな編成での自作曲ヒットのセッション。NYのラグジュアリーホテル”The Carlyle”で2008年4~5月に行われたもの。今年(これを書いているのは2009年)で56歳なのに、瑞々しく透明なあの声は健在。

構成はドラム、パーカッション、ギター、サックス、ベース、ピアノだけでバックコーラスもなく、徹底して小さなセッションスタイルを貫いている感じだが、まとまり感がよく、クオリティーが高い。クリアーで、はかなさや切なさを感じる楽曲を聴いているうち、ジャンルもスタイルも全く違うJimmy Somervilleを何故か思い出した。ハイトーンボイスに年齢ならではの「枯れ」(いい意味で)が出てきたからか。

追記:2012年3月にBillboard Live Tokyoであったライブも演奏・歌唱とも安定していて、よかった。ほとんどMCも入らず、淡々としていたが。