音楽レビュー R. Kelly


※R. Kellyのレビューについては、彼の女性への性的搾取と人権侵害の疑いを受けて全てのプレビューと購入先リンクを停止しています(2018/5/8)

The Buffet (2015)

(★★☆☆☆ 星2つ)

本当にこの人の色狂いはどうしたものかと思う。本人にしてみればお前なんぞにどうもされたくないわ、というところだろうが、セックスオンパレードはいつもの通り。セックスと音楽の融合を目指しているのだろうか。

楽曲を作る能力は素晴らしく、それはとりわけ、もうポピュラー音楽ではアイディアは出尽くしたと言われているメロディーを創り出すところに見られる。それ故リリースされるとつい聴いてみたくなるのだが、セックスばかりの歌詞に辟易してしまう。延々と、まだやる、もっとやる、と、他人様の行為を聴かせられ続けることの苦痛。

アンダーグラウンドハウスなどではもっとあからさまな声の入った曲もあったりするが、それとてダークなサウンドスタイルに包まれて演出されたものだから聴けるのであって、こうもすっぽんぽんに出されると、かえって興ざめだ。(2015/12/18 記)

Black Panties (2013)

(★★★☆☆ 星3つ)
R. Kellyはそのうちマイケル・ダグラスとかデイヴィッド・ドゥカヴニーのようにセックス依存症を告白するんじゃないかと思っているが、今回はアルバムタイトルがこれ。もう好き放題で、これをソニーミュージックでやっているというのもすごい。

しかし、題名を見るといい加減食傷気味になってくる。”Crazy Sex”, “Show Ya P***y”等々。メロディーメイカーとしての才能は定評あるところだとしても、こうしたあからさまはほんのすこしであればスパイスになるが、過剰だと繰り返し聴く気になれない。もう少しうまいアプローチがあるのではないだろうか。(2013/12/16 記)

Write Me Back (2012)

(★★★☆☆ 星3つ)

このアルバムは、出だしが意外だった。あまりにセックスしか登場しないものに反省したのだろうか?と思うような、軽快でクラシック、爽やかささえ感じるナンバーで始まるからだ。一時お色気を忘れて、この人のソングライティングの能力とかシンガーとしての力量とかは、やはり出色のものがあるなと思わせさえする。

で、純愛風に見せてどうなるかというと。そこはやはりセックス狂いのR. Kelly、すぐに「ちょっと飲み過ぎちゃったみたいだね」とベッドに連れ込んで、お約束の展開となる。ああやっぱり、なのだが、それでもどこか、何のカラーもないよりはマシと思わせる。エロな人は何歳になってもエロで行くのだろうが、何かが変わってきたことを感じさせた一枚。(2012/7/12 記)

Untitled (2009)

(★★☆☆☆ 星2つ)

R&Bにはセクシーさが必要だ。しかし、R. Kellyはセックスそのものである。”Untitled”がアルバムタイトルなのは、「いつものアレ」と解釈して構わないだろう。果たして聴くに、セックスのオンパレード。”Sex in the evening, sex in the morning”とか、「ヘッドボードにバンバン」とか、そんなことしか歌っていないのだ。ちょっとげんなりする位にそれが続き、そしてそれで終わる。私生活もかなり性的に糜爛(びらん)しているが、そのままという感じだ。音楽的にはしっかりした構成のものもあって、それが故に一層、「中身がこれでは…」と思わざるをえない。

たまに、専門バカと呼ばれる類の人間がいて、技術的には優れているかもしれないが、倫理観も人としてよくあることも何も顧みない人がいる。これを聴くと、R. Kellyはそんな人なのだろうか、と思ってしまう。映画に出てくる「エイリアン」の設定は、倫理観も憐憫も何もない、ただ生殖と捕食だけのために行動する生物、というものだが、それをすら感じた。かくして、彼には異名を授けよう。下品きわまりないが、そのまんまという意味で、彼は「歌うチンポ」である。