音楽レビュー Quincy Jones


Q: Soul Bossa Nostra (2010)


(★★☆☆☆ 星2つ)

Quincy Jonesの過去のアルバム2つに収録された曲を中心とした、自作曲の再解釈なるアルバム。アルバム2つとは、”Back On The Block”(1989 以下「B」)と”Q’s Jook Joint”(1995 以下「J」)。Quincy Jonesはプロデュースに秀でた人で、BでもJでもそうそうたるスター演奏者とボーカリストを招いて絢爛豪華な世界を展開してみせた。またその一方で新人発掘にも熱心で、自分の手になるアーティストを華々しく活躍させ、BではTevin Campbellが、JではTamiaがいずれもみずみずしく溌剌としたボーカルを披露している。

さて、そんな過去2アルバムのことを知ったうえでないと、このアルバムの意義を計ることはできないのだが、何だか日本のエンターテイナーの芸能生活XX周年記念のような、過去を振り返る自己満足をやるようになったらおしまいだなと思うような残念な気分になった。

BやJで見せた、あのわくわくするような、圧倒されて聴き惚れるような曲達が何だか色褪せて、剥製でも見せられているような気分になる。”Tomorrow”をTevin Campbellの代わりにJohn Legendが、”You Put A Move On My Heart”をTamiaの代わりにJennifer Hudsonが歌っていて、新しい人達はそれはそれで魅力的なのだが、原曲を知っていて聴くと、その曲とそのアーティストの組み合わせだからこそ生じ得たキラキラしていたものが失われた。
そして、眉目のダークバラードの名曲”Secret Garden”は、軽薄で無残なエレクトロビートを無理に乗せていて、ちっとも秘密の庭園ぽくないレプリカになった。アルバムを通して聴くと、「こんなはずでは…。でも次の曲は」と、期待と裏切りを繰り返すことになる。元が素晴らしかっただけに一層残念。