音楽レビュー Peabo Bryson


Stand For Love (2018)


(★★★☆☆ 星3つ)




最初に言っておくと、俺はPeabo Brysonのファンだ。ライブにも足を運んだことがある。なだけに、11年ぶりのアルバムが出ると聞いて、期待した。プロデューサーがJam & Lewisとなるとなおさらだ。ちなみにリリースも彼らのレーベルPerspective Recordsからで、なおさら期待が膨らむ。

1曲目、”All She Want To Do Is Me”の、スイング気味のビートが流れた時は、「おっ」とその期待は膨らんだ。同じくJam & LewisのプロデュースであるJanet Jackson “No Sleep”あたりの、大人のダンスグルーヴが感じられたからだ。ところが、歌が乗ると、少し期待が過ぎたかと思う。朗々とした歌声に文句はないのだが、どうも曲が意図したノリと、Peaboのソングスタイルとがあまりマッチしていないというか。

3曲目の”Looking For Sade”は、本当にSadeがやりそうなノリで、”Lovers Rock”に収録の”King Of Sorrow”を思いこさせる。他のアーティストとのデュエットを頑なに拒むSadeへのラブコールなのかもしれない。

後半になるにつれて、ああPeabo節だなあと思うが、Jam & Lewisのテイストはどこに?との疑問が浮かび続ける。上手く、そつがない出来なのだが、一歩踏み込んだ感じがほしい。そう思っているうちに、スタジオテイクわずか8曲は終わってしまい、ラストの9曲目はメドレーライブ。デュエット相手はChanté Mooreで、これまた俺の大好物であるはずなのだが、そのライブは素晴らしいにしろ、一方で、「ああ、貫禄と手持ちの札で乗り切ってしまったなあ」と、新しい曲を届けるスタジオアルバムとしての物足りなさは残る。

もっともっとPeaboには押していってほしかった。何せ11年ぶりのアルバムでもあったのだし。期待が膨らんだがゆえに、あっさりしすぎていて星3つとしたが、Peaboを好きなら、もちろん聴くべきアルバムではある。(2018/8/6 記)

Missing You (2007)


(★★★★★ 星5つ)

ベスト盤が出た翌年にリリースされた、オリジナルスタジオアルバム。彼のヒット曲は分かりやすいバラードが多いが、ここではより複雑な、スムースジャズのような音構成を試みていて、より洗練された雰囲気が楽しめる。アーティストとして成長して、新しい世界を切り開こうとしていることがうかがわれるアルバム。

The Very Best Of Peabo Bryson (2006)


(★★★★★ 星5つ)

Peabo Brysonは一般的にはいぶし銀。名ボーカリストでありながら、この人を好きというと、通な感じだ。

でも実はR&Bやソウルを普段聞かない一般の日本人でも、彼の声は耳にしている。結婚式会場で定番曲であるディズニーのアラジンのテーマはPeabo BrysonとRegina Belle(こちらも通好み)のデュエット。そして、「美女と野獣」のテーマでCeline Dionとデュエットしているのも、Peabo Bryson。もう少し懐かしいところで言うと、Roberta Flackとの”Tonight I Celebrate My Love”は、ブリヂストン・レグノのコマーシャルソングとして使われていた。

つまり、超メジャーなヒットを持っている存在なのに、彼に注目する人が日本ではそれほどいないのだ。多分、「いい声だな」「歌が上手いな」と思いながら、それ以上それが誰なのかを詮索せずに終わってしまっているようで、もったいない。

これはそんないぶし銀Peabo Brysonのヒット曲を網羅したベスト盤。上記のヒット曲ももちろん入っている。伸びやかで、流行に左右されない彼の魅力を総ざらいするには好適な一枚。