音楽レビュー Ledisi


Let Love Rule (2017)


(★★★★★ 星5つ)




今やすっかりLedisiはビッグネームになって、良質なR&B/ソウルを背負って立つ感さえある。このアルバムでは、前前作”Truth”と、そのアンプラグド(この言葉、今でも使うのだろうか?)バージョンである前作の”The Intimate Truth”のちょうど中間というか、作り込み過ぎず「オーガニック」すぎず、Ledisiの自在に歌う能力を最大限引き出すバランスのいい音をしている。

John Legendをフィーチャーしたデュエットは期待したよりもあっさりした感じだったが、アルバムの中ではいいアクセント。美しいストリングスアンサンブルから始まるバラード”All The Way”では、しっとりと聴かせ、アルバムに深みを持たせている。しかしそのバラードで終わらず、ミッドテンポの”If You Don’t Mind”で〆るのが渋く、Ledisiらしいところ。

Ledisiはしみじみ、いい歌手になったものだなあと思う。R&B/ソウルの旗手として活躍し続けてほしい。(2017/10/28 記)

The Intimate Truth (2015)



(★★★★★ 星5つ)

音的に躍進した感のある”The Truth”のアコースティックアルバム。驚いたのは、音的に工夫が見られたのが面白いと感じた”The Truth”よりも、こちらの方が繰り返し聴きたくなる魅力があること。

それはとにもかくにもLedisiの実力が、虚飾のないトラックで際立ったということなのだろう。アーティストの素の実力があらためて発見されるのがアコースティックアルバムの本来の意義なのだろうが、大抵は二番煎じ的というか、聴いたけれどもオリジナルの音がいいよね、という感想を持つ場合が多い。それが、この”The Intimate Truth”の場合、はっとさせられるみずみずしさや、声の艶や、ドラムスに頼らないグルーヴ感といった、R&Bボーカルに求められるエッセンスがひしひしと感じられるのだ。

聴いておくべきアルバム。(2015年3月3日 記)

The Truth (2014)



(★★★★★ 星5つ)

前作”Pieces Of Me”を「いぶし銀」と評したが、本作ではついに勝負に打って出た感がある。声の出し方、レンジの使い方からして違う。いわゆる「黒っぽい音」を嗜好する人も満足させるだろうし、一方でさほどそうでなく、Ledisiの音楽を初めて聴いた人も「お、これは誰?」と注意を引かれるだろう音作り。トラックも打込みそのままのようなスカスカ音でなく、工夫が見られる。

近年、R&Bに限らないが特にR&Bは互助制度なのだろうかと皮肉りたくなるほどフィーチャリングアーティストが誰なのかでアルバムの話題を集めようとするところがあるが、その点でもこのアルバムはエライ。自力で頑張っている。そして見事に成功している。内容の濃いアルバムで、これでまた新しいステージに前進してほしい。(2014年3月25日 記)

Pieces Of Me (2011)



(★★★☆☆ 星3つ)

実力派という言葉には、文字通り実力で勝負する人という意味の他に、エンターテインメント界では、メジャーになりきれない人とか、どうも売り出しに成功しない人という意味がある。そういう皮肉な意味も含んで、Ledisiは実力派だ。歌唱力は文句がないのに、どうもメジャーになり切れない。

このアルバムではエッセンシャルなソウルに立ち返ろうとしたのか、土臭い、エレクトリックな音を拒否したかのような音作りで、本物志向なのだろうが、どうも時代錯誤的というか、聴きにくい。2011年の今にあってそうした音作りは、懐古趣味でかつ昔をシミュレートした感じが、残念に思えてしまう。アーティストとしていいものを持っているとは思うのだが、ブレークするポイントが欲しいものだ。