音楽レビュー Keke Wyatt


Keke Covers (2017)


(★★★☆☆ 星3つ)




前作のオリジナルスタジオアルバムが今ひとつKekeの良さを活かしきれておらず、フラストレーションを感じていたところ、今回はカバー集。となると、歌唱力で勝負ということになるのだが、このアルバムは残念ながらどうにもカラオケ感から抜け出るものがない。

その原因の一つは、アレンジにもあるだろう。カバーとなると、オリジナル曲らしく仕上げてそこで自分の歌唱の魅力で勝負するするか、アレンジで目新しさを演出するかが焦点となるが、このアルバムは前者。
ところが、そのアレンジは、オリジナリティの保持というよりも、創意工夫のなさに聴こえてしまう。”This Is What You Came For”などは、家でかけていると、あれ、アルバムが終わって他のアーティストにかけ変わったのかな、でもこの曲は嫌いだからライブラリには入れていないはずなのに、と、カバーアートを見直してしまったほどにトラックを丸コピーしている。

では歌はどうかというと、もちろん下手ではないのだが、曲によってはメロディーをなぞっているだけに聞こえたり、ダルだったりして、生き生きしたKekeの本来の良さが伝わってこないのだ。Whitney Houstonの (Dolly Partonの、ではなく)”I Will Always Love You”なんかは、多少のフェイク(節回し)で色を加えているものの、やらなければよかったのになあ、と思ってしまう。

才能をもったKeke、せっかくの美点がもったいない。ぜひオリジナルで輝きを取り戻して欲しいものだ。(2017/2/20 記)

Rated Love (2016)


(★★★☆☆ 星3つ)




どことなく漂う寂寥感というか、アンニュイな空気は一体どこから来るのだろう? Faith Evansと共にR&B Divasに出、FEの次作にもフィーチャーされた時には勢いを感じたのだが、その時の輝いていた感じが後退したように思われる。

楽曲のメリハリのなさも、その憂鬱な感じを構成する大きな要素なのだが、何より歌が流れすぎというか、フェイクの節回しがうまく、粘っこく歌っていた感じが影を潜め、まるで何かに悩んでいるかのように感じられる。時代が不幸な時代に突入していることの現れだろうか? 何にせよ、どこか逡巡や煩悶の影を感じるアルバムで、素直に聴けるR&Bを期待していたので、とまどってしまった。(2016/6/14 記)

Unbelievable! (2011)


(★★★★☆ 星4つ)

インディアナポリス出身、両親はシンガーとオルガン奏者、幼少より音楽に親しむというと、R&Bシンガーにありがちなプロフィールだと思われそうだが、一聴して実力ありだなと分かる。若いがぽっと出ではないらしい。10代の頃から歌声を披露していてデビューが噂されていたが、メジャーレコードでのフィーチャードアーティストとしては、最初にデュエットシンガーとして名前が出てからソロデビューまで実に9年を要しているという。

細身の外観とはうらはらに、かなり粘っこい歌い方をする人で、その辺はルーツを生かした感じに聴こえる。曲選はセールスを伸ばさなければと意識されたのか、いくつかカバー曲があって、あのAlexander O’nealCherrelleのデュエットの名曲”Saturday Love”や、Eric Claptonの”Tears In Heaven”など。また、Kelly Priceもフィーチャーされた曲もあるが、それは声質が似すぎていて、歌いっぷり対決の割にはあまり良さがよく分からなかった。やはり締めくくりのゴスペルソング”His Eye Is On The Sparrow”あたりが彼女の本質だろう。

R&Bが好きで、新鮮な黒っぽい音楽を欲しているなら、一聴の価値あり。