音楽レビュー Judith Hill


Back In Time

Judith Hill "Back In Time"
(★★★★☆ 星4つ)

Michael Jacksonの幻に終わったツアー”This Is It”で”I Can’t Stop Loving You”をデュエットするはずだったJudith Hill。出鼻を挫かれ、苦悩する様子はバックグラウンドボーカリスト達のドキュメンタリー映画『バックコーラスの歌姫たち』でも描かれていた。

その後ソロデビューするかどうかに注目が集まっていたが、今年ソニーミュージックと契約。Princeのプロデュースによってこのアルバムが作られ、3日間だけだが何とフリーダウンロードのプロモーションが展開された。しかしPrinceはそのことについてソニーから訴えられているようだ。

とまあ外部事情に翻弄され続けるJudith Hillだが、ソロデビューの準備は整ったわけで、あらためてこの”Back In Time”を聞いてみる。Princeのプロデュースと知っていれば「ああいかにもPrinceだな」という音なのだが、それでも肝心のJudith Hillのボーカルの魅力は充分引き出されている。かつてやはりPrinceがプロデュースしたMavis Staplesあたりがやりそうな、ナチュラルでリラックスした構成のトラックは好感が持てる。

一方、今を席巻している音からは距離をおいたクラシックな音作りのため、大ヒットは望めないだろうなという予感がする。リミックスもやりにくそうだ。これがJudith Hillの望んだ音なのかどうかは分からないが、最初に商業的軌道に乗せる配慮としてのサービスとしての楽曲が少し盛り込まれていてもよかったのではと思う。

これが無事陽の目を見るか? 期待して待ちたい。→追記:アルバムは無事10/23にリリースされ、アメリカでのiTunesのアルバムチャートは全体で71位を記録。(2015/4/21 記 2015/11/25 追記)