音楽レビュー El DeBarge


Second Chance (2010)


(★★★★★ 星5つ)

女性のような繊細な声と、創り出す音楽の美しい旋律は、80年代の財産だったと思う。バンドDeBargeは成功し、たしかその当時Janet Jacksonとの浮名も流したような。ソロになってから最初も成功し、1986年に出たシングル”Who’s Johnny”あたりは聴くと思い出せる人もいるだろう。その後どうなったのか、俺の中ではすっかり埋もれていて、1992年のアルバム”In The Storm”くらいしか聴いていなかった。それが、去年久しぶりにこのアルバム”Second Chance”を出したというので、聴いてみた。(これを記しているのは2011年)

あの声は健在。ポップすぎるとかいう人もいるが、アイドルではないし(出た時にはアイドル扱いされたかもしれないが、自分のサウンドスタイルはその頃から持っていた)、El DeBargeはEl DeBargeしか創り出せない世界を持っていて、ちゃんとその世界が展開されている。ちょっとせつなくなるような、聴いている空間の透明感が増すような、それは財産であると思う。

なぜ”Second Chance”と題されたのか。2000年代にEl DeBargeは薬物問題とDV問題を起こし、苦しい時代を過ごしたようだ。薬物使用やDVは犯罪ではあるのだが、周りだけでなく本人をも苦しめる問題だ。(DVは被害者だけでなく、加害者もかなりの精神的痛手を負うことは世間的にあまり理解されていない)それらを乗り越えて、新たな時代に自分のキャリアに復帰することができた彼にとって、これはまさに”Second Chance”なのだろう。これからもいい音楽を届けてほしい。彼の音楽には、良心があふれている。