音楽レビュー Cheryl “Pepsii” Riley


Still Believe (2015)


(★★★☆☆ 星3つ)




1993年の名盤”All That!”後、2006年に復活した際の下記のアルバム”Let Me Be Me”はパッとしなかったが、それから9年を経て、いわば再カムバック。下記”Let Me Be Me”で歌わせていた実子のJohnは、本アルバムのラストに収録されたInterlude “In My Heart (Mommy Loves John) “でも声が入っている。さすがに歌わせてはいなく、セリフだけだが。Cherylは離婚したとのことだが、子供への愛は変わっていないのは大いに結構。しかしこの私情のInterludeはアルバムにはやはり余計。私的体験が作品に影響するのはアーティストにはよくあることだが、生の素材そのままを投入されたこれは、芸術に昇華しているとは言いがたい。それに、全般で見ると12トラックのうちrepriseが1トラック、3トラックがinterludeで、構成として横道に逸れすぎだと思う。

もう”All That!”からは22年経ち、さすがに少し声質は変わった。はつらつとした声でコロコロとフェイクを入れながら歌うスタイルから、少し枯れ気味の声でさらっと歌うスタイルになったのは、大人なりの作法を身につけたと思うべきか。それでも”Just Can’t Stop”や”Work In Progress”、”Trust Your Gift”といった後半の曲では喉の強さを見せつけるかのようなこってり・たっぷりとしたすさまじい歌唱が聴け、往年のファンを喜ばせるだろう。

サウンド構成は生音中心で、ドラムでさえ打ち込みでない。音楽の本質を追求したような音は、最近の加工なしのシンセ音がポロポロ鳴るエセR&Bと対極的。玄人好みの本アルバムが評価されることを願う。(2015/5/22 記)

Let Me Be Me (2006)


(★★☆☆☆ 星2つ)

Cheryl “Pepsii” Rileyの名前を見て、「ああ、あの!」と思う人は、かなりR&B/ソウルを聴き込んだ人だと思う。すっかり過去の人だと思っていたが、2006年にアルバムを出していたので、聴いてみた。
D’atra Hicksの復活アルバムを聴いた時のような、時の経過の残酷さを感じたが、それでもあの声が、少しハスキーになって新しい曲を歌っているのは新鮮に思えた。年が経過して、やや腰が折れたワインを味わう時、その味わいに残念と懐かしさとを感じ、ベストであった時を想像する作業に似ている。

ところで、1968年生まれのCheryl “Pepsii” Rileyも時を経て、母になったようだが、アルバムに自分の年端もいかない子供に歌わせた”Mommy Loves Johnny (John’s Lullaby)”という曲をいれているのは、お遊びが過ぎていて、いただけない。Interludeならともかく、延々ガキの下手っぴな歌をソウルアルバムで聴くことを望んでいる人はいない。そういう点でも、残念だった。