音楽レビュー Charlie Wilson


In It To Win It (2017)


(★★★★★ 星5つ)




ベテランが今もアルバムを出し続けているのは嬉しい。才能のあるアーティストがなかなかアルバムを出せないなか、手堅い構成をしつつも自分のカラーを出し切って今を乗り切るCharlie Wilsonに拍手を送りたい。

さて、手堅い構成といえば、フィーチャリングアーティスト、悪く言えば客寄せパンダをいかに使うかだが、ここでは盛り上げ部長PitbullにSnoop Doggと、2人を呼び寄せた他、Lalah Hathawayとのデュエットを見せるなど、ラップからスムースジャズ界まで幅広くを押さえている。

音楽的には、Charlie Wilsonらしい確立されきった世界。朗らかさを感じる歌を大事にしたR&B/ソウルの珠玉といってもいいだろう。時流に遅れず、しかし流されずのいいバランスを展開している。ボーカルも衰え知らず。聞いていてその良質さにほっとした。(2017/3/9 記)

Forever Charlie (2015)


(★★★★★ 星5つ)

良き時代のメロディックなサウンドスタイルを持ちながらも、ダンサブルな曲も適度にフィーチャーし、飽きさせない音作り。そして肝心のボーカルも秀逸。貫禄がありながらも伸びやかで、何よりCharlie Wilsonがいいのはその声質が明るいこと。

Snoop Doggをフィーチャーするなど、ポピュラーでキャッチーな感じのする一方で、コアなファンをも満足させる歌いまわしのフェイクの使い方なども魅力的。こうした良質なR&Bを聴くのはとても気持ちのよいものだ。愛に満ちた感じのアルバム。(2015/2/7 記)

Love, Charlie (2013)


(★★★★★ 星5つ)

知らなきゃR&B好きとしてはモグリと言われるような恥を晒すと、「聴いたことがあるような、名前も聞き覚えがあるような」と思いつつこれを聴いた。こんなに貫禄のある人なのに何故チェックが行き届かなかったのか、とキャリアを調べるに、あのGap Bandのリードボーカルだった人。ああ、なるほど、安定感はそこかと膝を打つ。

良きアメリカを彷彿とさせるゆったりと美しいメロディーの曲の数々を聴かせてくれるCharlieだが、これはメロディーが失われて久しい今のR&B/ソウルの音楽界の現況を考えると、ほとんど美徳とか施しといっていいレベルにまで達している。内容も甘々だが、サウンドスタイルは懐古的すぎず、ゆったりしてはいても年寄り臭くはない。その辺が、Charlie Wilsonは現役だなあと感じさせるところだ。

ところで、このアルバムの売りの一つはラストの曲”Whisper”でのKeith Sweatとのデュエットらしいが、そこはあまりピンとこなかった。Keith SweatはLSG以来、どうもソロで精彩を欠いている気がする。(2013/3/15 記)