音楽レビュー Aretha Franklin


Aretha Franklin Sings The Great Diva Classics (2014)


(★☆☆☆☆ 星1つ)

前作のひどい出来から、何とかセールスを回復したいところという考えか、カバーアルバムを発表。Clive DavisやBabyfaceをプロデューサーに迎えてキャッチーな路線の選曲。アルバムタイトルからも見て取れるとおり、直球。

しかし、前作の歌のひどさから少しは復活したかと淡い期待を抱いて聴いたのだが、「もう勘弁してあげて」と言いたくなるような歌いぶり。老兵は死なずただ立ち去るのみ、ではないが、そろそろ引退してくれた方がソウルの女王の名を汚さずに済むのではないか。

前作を下記のレビューで「退屈なディナーショー」と言ったが、それをカバーするかのように、アップテンポの”I Will Survive”や”I’m Every Woman/Respect”などがある。しかしどれも耳を覆いたくなるようなダサいアレンジに枯れ果てたArethaの声。ビブラートが音程を超えていないのだけが救いだが、残酷過ぎる。Arethaを敬愛する人は聴くべきでないアルバム。(2014/10/23 記)

A Woman Falling Out Of Love (2011)


(★★☆☆☆ 星2つ)

星2つの評価。ストレスを感じる。あまり聴かれることのないアルバムになりそうだ。Aretha Franklinが偉大なアーティストであることは重々承知なのだが、これははっきり言ってあまり良くない。一言でいうと、ババ臭くなった。歌い方はダラダラしていてメリハリがないし、ビブラートは半音を超えそうだし、声質も良くない。

Arethaは、アルバム”What You See Is What You Sweat”よりも後から、急に声が細くなった。音楽界にとってのみならず、アメリカ黒人社会にとってもあまりにも偉大な人ゆえに、Queen Of Soulに対して「女王様は裸だ」と誰も言えない状態なのだろうが、オバマ大統領の就任式の歌も声が出ていなくてひどかった。2月のワシントンD.C.の屋外という悪条件を差し引いたとしても。このアルバムを聴いて、過去の人になったのだなあと決定的に知らされた感じだ。

音もシックな感じにしたかったのだろうが、ダルで、ホテルで退屈なディナーショーでも聴いているような曲が続く。「熱唱」しているところは、今となっては耳障りとなった細いハスキーボイスが、がなっているようにしか聴こえない。こんな音作りでそんな歌い方をしなくてもいいのに、とも思う。
そして、ゴスペル曲”His Eye Is On The Sparrow”でびっくり。アレサが出てこず、何となく捉えどころのない、そう上手くもない男性が歌っていて誰かと思えば、息子のソロ。ああ、やっちゃったな、と思う。

アレサは長年いたレコードレーベルのアリスタから独立し、自分のレコードレーベルを作ってやっとこさこれをリリースしたのだが、これが果たしてアレサのやりたかったことなのか?と疑問に思う。
去年、体調を崩したのがすい臓がんで、重大な手術を経て、アレサの独立を渋っていたアリスタが態度を軟化させ、このアルバムリリースが実現した経緯があるが、このアルバムのレコーディングは実は2005年に行われていたらしく、それが今になってのリリース。人間引き際が肝心かとも思わされ、聴いていて、いろんな意味で辛いアルバムだ。