音楽レビュー Allen Stone


Radius (2016)


(★★★★☆ 星4つ)




昔、Blue eyed soulという言葉があった。白人の演るソウルで、その言葉があった頃にはBESに属する人々の音楽はヒットチャートを賑わせた。彼らの音楽は確かにソウルのにおいがしたけれども、それでも生粋のソウルとはやはり異なった一ジャンルであったように思う。

そして時代は遷り、音楽はボーダーレスというかクロスジャンルになってきた。BESという言葉も忘れられかけたなか、Joss Stoneはそのデビュー年齢と共に完成度が話題となったが、彼女のデビューももう13年も前。そして彼女は段々レゲエに傾倒して行き、BESはまた空席になった。

そこへ持ってきてこのAllen Stoneである。ワシントン州の片田舎の出身だそうで、風貌はどちらかというとnerdな雰囲気。そこからファンキーなノリの音楽が生み出されしかも歌う(彼はシンガーソングライターである)というのは、なかなか想像できにくい。しかしこのグルーヴは本物であるように感じられる。Capitol Recordsの入れ込みようもすごく、何とPVをあの有名な自社ビルの上でライブを演らせて録っているのだ。

ソウル、とは言ったが、サウンドのノリはファンクである。声もまた、そのファンクに似つかわしい声。もしAllen Stoneについての事前情報がなかったら、誰もこれが長髪眼鏡の肉感の薄い白人青年から発せられているとは思わないだろう。しかし、Allen Stoneの音楽のすごいポイントは、演らせられているのでもなく、完璧にモノマネで完全コピーしているのでもなく、彼自身から生み出されていることがひしひしと感じられること。これは聴いてみないと分からないのだが、よくなぞった物とは一線を画した「血」が感じられるのだ。そして25歳にしての完成度にも目を見張る。

こうした音楽が出てくると当然賛否両論で、特に突き上げも小さくはなかろうが、良い本物の音楽を演り続けてほしい。(2016/5/7 記)