音楽レビュー Diana Krall


Turn Up The Quiet (2017)


(★★★☆☆ 星3つ)




ポピュラーソングをジャズ風に仕立てた前作”Wallflower”よりもよりジャズらしいナンバーが並ぶ。シックで落ち着いた歌い方はそうした曲目に似つかわしく、いかにもジャズ歌手だなあという本領発揮。

ただ、最大の特徴であるその声でコンディション的に「ん?」と思わせるテイクがあった。ちょっといがらっぽい感じのする所があるのだ。ジャズとはニュアンスが大きく響く世界。聴き手もうるさ型が多く、そうした箇所は必ずや槍玉に挙がるだろうところ。他の曲では同じ声域でもそんなことはないので、これは何故録り直しをしなかったのだろうかと引っかかる。
それに、あまりにもささやき加減でやられて、もしライブでするならどんな集音能力の高いマイクを使わねばならないのだだろうか、と要らぬ心配をするほど。

それから、これがこの人のカラーといってしまえばそれまでなのだが、無難すぎる感じがする。ソングスタイルがスモーキー・シックなのは分かるが、やはり前作同様、アーティストとして突き詰める挑戦としての攻めが少ない。アバンギャルドすぎるジャズも聴いていてお説教でもされているようで疲れてしまうが、このアルバムはアレンジ含め、この2017年の今、新譜である価値は、と思ってしまった。(2017/5/27 記)

Wallflower (2015)


(★★★☆☆ 星3つ)

タイトル(『壁の花』)のとおり、地味でしっとり系の曲が並ぶ。ただし、いずれもヒット曲のリメイクで、地味だからといって聴き飽きることはない。”California Dreamin'”, “I’m Not In Love”, “Don’t Dream It’s Over”などなど。

しかし、一人カラオケショーというか、そりゃそういう曲選なら嫌われはしないでしょうよ、という企画の安全牌的側面が少々残念。
そしてアレンジがごくごく普通のポップス的かつアンプラグド的アレンジ。編成にストリングスセクションが入っていたり、テンションコードも聴かれなければインプロヴィゼーションもなし、これがジャズ歌手のアルバムと思って聴くと大いに疑問。

ただ、不思議と繰り返し聴きたくなる魅力を持っている。やはり魅力的な声のせいだろうか。ジャンルの垣根にとらわれたくないということの表れとして聴けばいいのだが、どこかもっと攻めたところがほしいなと思わせた。(2015/2/9 記)