音楽レビュー Sheila Ford


Here You Are (2015)


(★★★★★ 星5つ)




ハウスディーバが自分名義のアルバムを出すことは珍しい。詳しいバイオグラフィーを知らないのだが、90年台半ばにはフィーチャーボーカリストとしてデビューしており、その後もKenny “Dope” GonzalezやMuthaFunkazなどにもフィーチャーされるなど、ハウスとしていい線を歩んでいる。

このアルバムもその両名によるリミックスの他、Louie Vega、DJ Spen、Dimitri From Paris、Joey Negroなど、豪華な名前が見える。サウンドは1曲目のタイトルソングを聞くとラウンジ風かなと思いきや、そんなリミキサー陣ではそれに留まるはずもない。さすがKenny Dopeならではのニューヨリカンソウル風を聞くこともできれば、ジャズハウス風もあり、正統派のクラシックハウスありと面白いが、近年のループばかりだったり安直なトライバルになったりといった曲は入っていないのが玄人好み。

声質は素直で、高音までよく通る伸びやかなもの。スキャットを頑張ったかと思えばソウル風にフェイクを歌いこなしてみせたり、そのまんまジャズのスローナンバーも披露したりと、かなり幅広い対応能力がある。大人のハウスが聴きたいがディープハウスほど内省的でなく、踊れる音がほしいといった向きにはお誂え。今後もこの人がフィーチャーされた曲はチェックしていきたい。(2015/5/28 記)