音楽レビュー Kaskade



(★★★★☆ 星4つ)




Kaskadeのことは、聴くといいなと思いながらも、そう熱心に追っている訳ではない。サウンドのバリエーションが多く、ポップでガラージ寄りのものもあれば、ミニマルで内省的な音まで様々で、自分のライブラリーに加える時に、ジャンル分けをどうしたものかと思うことも多いのだが、彼自身の中ではプロジェクトによりきちんとしたカラーの分け方があるのだろう。Reduxはそうしたバリエーションの中でも、ミニマルやディープハウス寄りだと勝手に理解している。

一見、誰にも作れるような音に聴こえる。EDMが流行った(すでに過去形だ)となれば少しそのエッセンスも取り入れて、うまく料理してみせているし、音の構成や音色作りも、分かりやすい。が、そこを絶妙なさじ加減で自分の音にするのがKaskadeだ。多くのハウスミュージッククリエイターやリミキサーは、誰かのシングルのリミックスによって特徴を聴かせ、一曲一曲が勝負なことが多い。が、Kaskadeは、たとえばこのアルバムのように、全体を流れで聴いて、曲が複数集まって全体の印象を決定する、いわば印象派の絵のような、あるいは点描画のような印象がある。ハウスミュージックの人の作風としては、珍しい。本作では、さらにそうしたミニマルな構成で自分の音楽を引き立たせる、研ぎ澄まされた作りが推し進められたように感じられる。

そして、そうした流れでゆっくり作品を聴くと、誰にでも作れそうな、という最初の感覚は誤りで、これが彼唯一無二の世界観なのだと知ることになる。大変興味深い。そして、Kaskadeは、聴くべきハウスミュージックの一つだと思う。(2019/8/28 記)

It’s You, It’s Me Redux (2013)


(★★★★☆ 星4つ)

2003年に出ていたアルバム”It’s You It’s Me”にリミックスを加えて出たアルバム。というともう10年も前になるので、音が古臭く感じるかと思ったが、そうでもなく、オリジナルバージョンとリミックスバージョンの間にタイムギャップを感じさせない。Kaskadeは一応ディープハウスに分類されるのだろうが、あまり禁欲的でなくカラフルで、聴いていて虚無感や虚脱感に襲われることもなく、快適。スタイリッシュで音作りに知性を感じる。ボーカリストの声質もサウンドスタイルにフィットしている。一言でいうと、大人のハウス。記憶に残る上質な音楽を作り続けてほしい。(2013/8/8 記)