音楽レビュー Cevin Fisher


House Legends (2013)


(★★★★★ 星5つ)

硬質でハードでシリアスな音といえばCevin Fisher(以下CF)。ハードハウスというと軒並みBPMが早いが、CFは伝統的な比較的遅めのBPMで独自の世界観を表現している。このアルバムではCFのルーツから作品をアーカイブ的に聴けるコンピレーション。CFの変名である7の名でのリリース曲も含まれている。

肝心の音だが、これぞニューヨークハウスといった感じで、出だしのタイトルからして”New York, New York”。これはレーベルのKing Streetらしい音ともいえる。最近の作品では禁欲的になり、一種ディープハウスといってもよいような仕上がりのものもある。
面白いのは、どこかで聞いたようなモチーフをうまく今にマッチする形に料理しているところ。以前リリースされたCFの名曲でいうと、故Loleatta Hollowayのボーカルをサンプルした”(Got Me) Burning’ Up”の仕上がりが秀逸で、耳馴染みのあるフレーズをスタイリッシュに仕立てるのが特徴の一つだが、それはこのアルバムでも見られる。具体的にいうと、2曲目の”The Power”は、Shades Of Loveの”Keep In Touch (Body To Body)”にフィーチャーされていた”All we gonna do right here is (to) go back”のフレーズが、オリジナルでの煽る感じとは全く違うクールなサンプルボーカルとして入っていて、楽しめた。

アルバムとしての構成はどうかといえば、ボーカルものとインストゥルメンタルものとのバランスが良い。あまりに絶唱Diva系ばかりだと疲れてしまうし、インストゥルメンタルばかりだと気分が内向きになってしまうが、その辺りを汲んでか、うまく編成してあり、Cevin Fisherの音をまとめて飽きることなく聴けるのは嬉しい。正統派アンダーグラウンドハウスを愛する人、クラブミュージックの真髄を知りたい人には必聴。(2013/3/12 記)