映画レビュー ユートピア (同流合烏 Utopians)



(★★★☆☆ 星3つ)




雲翔 (Scud)監督の手になる作品のうち、これは彼の三部作三作目パイロット版にあたるのだと言う。(一作目は『永久居留』、二作目は安非他命』)。全体を支配する享楽的でありながら悲恋を下敷きにしたアンニュイムードは、この作品にも基調として流れる。悪く言えば代わり映えしないのだが、それがカラーというものだろう。

例によってゲイ的にセックスアピール満点な、ちょっと「おぼこい」顔の青年を主人公に据えて(童顔というよりは、京都弁でそう表現するのがぴったりくるように思われる)、その魅力で引っ張って行くのも三部作の一作目・二作目と共通。はっきり言って、大学の哲学講義で流れるギリシャ哲学やら、ちらつかせられた三島由紀夫のイメージ・文学・思想などは添え物である。

なので、結局この映画を観るに耐えるものと捉えるのは、男性美とかゲイ性を受け入れて楽しめるかどうかにかかる。しかし、また言い訳めいた性的指向の曖昧なクロスボーダー的描写がそれへの傾倒を阻むので、結局のところ、ゲイにとっては物足りなく、ストレートその他にとっては理解し難い作品になってしまっているのではないか。となると、言い方はアレだが、「たかが」大学教授でバンコクに瀟洒なアパートメントを別荘として保有していたり、クルーズパーティーを開くような設定は、いかにも浅薄に見えてき、それもまた、映画への心酔を阻む要因になってしまっている。

これは前述したとおり、三部作のパイロット版と、監督自らが位置づける作品だ。なので、その本番にどれだけの濃密な世界が凝集されて描き出されるのかを、期待したい。監督また曰く、それが最後の作品になるであろう、との、伏線も気になるところではあるが。