映画レビュー トランスアメリカ (Trans America)



(★★★★☆ 星4つ)

家族の価値観というテーマに焦点を置くとしたら、結局この映画は、One familyとかBlood is thicker than waterとかいう古典的因習的価値観から、新しい境地に1ミクロンも踏み出していない。それに、子供が真実を知るだろうということ、ある種の和解を最後に見るだろうというスタイルであるところも、トラディショナルで予定調和的。良くも悪くもまとまったロードムービー、という星2つ程度の評価で終わると思う。

しかし、登場人物にイライラさせられたりすることで(主人公にはイライラしなかった)、知らずに作中に引き込まれている自分がいた。演技の秀逸さ もあるところながら、描き出す人物に最終的な温かい目が注がれて、大切に作られた映画であるからだろう。素材は一見奇抜、ストーリー運びや骨子はトラディショナルで、その両者がうまく結びついた作品だ。