映画レビュー ぼくのバラ色の人生 (Ma Vie en Rose)



(★★★★☆ 星4つ)

女の子になりたい、もしくは自分を女の子だと思っている男の子の物語。フランスの片田舎で、父親のボスの近所に一家で移り住むが、数々「問題」を引き起こし…、という筋書き。

最終的には何とはなしのハッピーエンディングになるのだが、それが諸手を挙げて万々歳という感じではないのが、フランスのひねくれ具合で、先ごろ観たLGBT映画の『あしたのパスタはアルデンテ』のイタリア的大団円とは違っているところ。因みにこれはフランス・ベルギー・イギリスの合作映画で、1997年制作。

そして、女の子になりたい、もしくは自分を女の子だと思っている主人公リュドヴィクは、時々ファンタジーの世界に入り込むのだが、少しピエール&ジルを思い起こさせるポップでキッチュなファンタジーの色調とは裏腹に、リュドヴィクが周囲に理解されず、果ては精神科医にまでカウンセリングに持ち込まれるストーリー運び自体は重苦しい。つまり、医者に連れて行かれるということは、両親からの正しい理解も得られていないということだ。その筋書きの苦さをバランシングするためのファンタジー的演出なのでは、と思われるほどにリュドヴィクの境遇は過酷。当然、いじめもある。

しかし、重苦しさ一辺倒ではなく、リュドヴィクをおばあちゃんがかわいがってくれたり、力及ばずながらもリュドヴィクの兄姉はそうそう批判的ではないところがまだ救いどころ。

それにしてもすごいのは主役のリュドヴィクを演じるGeorges Du Fresne。天才といってよい。ルックスもこの役に似つかわしく、まさに適役。因みに1997年のこの映画後どうなったのかと思って調べたら、ストラスブール大学で建築を勉強しているのだとか。

この映画は幼少期に「オカマ」だの何だのと言われていじめを受けた人には、その体験がフラッシュバックしてきて観るのが大変辛いのではないだろうか。成人でさえ、自分のことを受け入れられず(実際は何も悪いことはないのに)後ろめたい気持ちで自分を抑えて暮している人も実際多いなか、小さい子の葛藤は察するに余りある。ストーリーを通じて、自分や社会の「普通」と異なる人々への理解の大事さ、最悪でも排除しようとしないことの意義深さを、あらためて考えさせられた。(2017/6/16 記)