映画レビュー ドント・ブリーズ (Don’t Breathe)


※核心には触れていないがややネタバレ注意


(★★★☆☆ 星3つ)




設定と出来はいずれもまずまず、展開も割合早くて飽きさせなかった。が、ところどころにほころびがあり、その辺りが星1つを減じて星3つ。

どうしようもないクズ親と暮らすことに辟易した女が、子供との逃走資金の確保のため、仲間と盲目の老人宅に窃盗に入る(日本語版のあらすじには強盗と書かれているが、強盗は被害者を威迫しないと強盗でないので、秘密裡に事を運ぼうとするのは窃盗だ)。しかし純粋な被害者のはずの老人がとんでもないヤツで、という筋になっており、登場人物がいずれも共感できなさげな感じにしているのは◯。ホラーにありがちな、男女のカップルがインシデントをくぐり抜けてゆこうとする設定が基本ではあるのだが、それが無垢でないというのがいい。

まず、誰が見てもクズなやつが呆気なく死ぬのは定石。それはもう死ぬべくして出て来るスケープゴートで予想の範囲内、焦点はそこから先。被害者として憐れむべき老人が盲目ではあるが驚くべき聴覚と恐るべき体力の持ち主で、窃盗に入った方は逆に殺される恐怖から必死に逃げる、という設定なのだが、驚くべき聴覚ならそこは気づくだろう、というところが見過ごされていたりすると、矛盾を感じて観る側のテンションがやや下がる。

しかし、その老人のマッド具合、見た目も含めた肉体的な屈強さは、いいキャラクター作りをしたものだと思う。冷や冷やさせながら進む展開もなかなかいい。ホラー映画の押さえるべきスリル設定は押さえつつ、「お!」というサプライズもある。が、さすがにそこまで負傷してそれ?といったところはやや疑問。そして終わりは、これでヒットしたら次作もありかも、というエンディングなのも、最近のお約束。結構この映画はヒットしたようで、本当にこれを引き継いでの次作もあり得るかもしれない。

ホラー映画好きなら恐らく観て損をしたということはないだろう。秀作とはいえないかもしれないが、観ておいてもよい作品。(2017/5/17 記)