映画レビュー チャイルド44 (Child 44)



(★★★★★ 星5つ)




サスペンスで、なかなかに衝撃的な場面が含まれているが故に星4つにしようかとも思ったが、総合的に素晴らしく星5つ。

ストーリーに関しての感想は原作小説とほぼ同じなのでそちらに委ねるとして、まず演技がなかなかにいい。主人公レオ・デミドフを演じるTom Hardyの面構え。孤児院出身、成長してからはMGB(ソ連国家保安省 後のKGBの前身)で活躍する冷血漢として、最初は権力悪の匂いを漂わせるが、次第に真実への追求者へと変わってゆくことを、表情でもしっかり演技している。レオ・デミドフの妻ライーサを演じるNoomi Rapaceも捨て身の演技で凄い。そしてあのGary Oldmanも出てくるのだが、これまた渋い役。

セットも時代考証もしっかりしている。旧ソ連の雰囲気にノスタルジーを寄せるマニアックな人達をも魅了するだろう。

ストーリーについての感想は上記どおり本に委ねたが、本にはちょっと映画にはできそうもない凄惨なシーンや、映画と違って尺を気にしすぎることもないが故に、ベースとなる連続猟奇殺人についても、しっかり描かれている。逆にこの映画では主人公の活躍にフォーカスされすぎていて、猟奇殺人は添え物の感じさえするのだが、バランスとしては映画ではこれが最良だろう。

興行成績は世界で340万ドルと振るわなかったようだ。映画評論家からの受けも今ひとつ。テーマが大きすぎ、その中で猟奇殺人とMGBの確執や暗躍が絡むので焦点が散漫になるとの批判が見受けられる。それに、アメリカでは旧ソ連が舞台というだけでそれを受け入れられない人もいたことだろう。となると、原作では『グラーグ57』『エージェント6』と続くが、これでシリーズとしては打ち切りかもしれない。しかし、俺としてはそれをよく2時間半の映画にまとめたものだと思う。見る価値がある。(2017/1/20 記)