映画レビュー バロウズの妻 (Beat)



(★★★★★ 星5つ)

原題は”Beat”が示すように、ビートニクの旗手としてあまりにも有名なウィリアムズ・バロウズと、バロウズに射殺されたその妻ジョーンヴォルマー(Joan Vollmer)をテーマにとった映画。

バロウズを高名に押し上げた要因の一つがその射殺事件「ウィリアムテル事件」で、バロウズはドラッグで心神耗弱状態の時に(と法廷では主張し、その主張は認められた)ヴォルマーを撃ち殺した。映画ではその事件のシーン、ヴォルマーがバロウズを挑発するシーンから始まるが、そのヴォルマーを、私生活でも何かと暴力事件やドラッグで名の挙がったことのあるコートニー・ラブが演じるのだから、ビートニクのアナーキーなイメージと重なる。ちなみにバロウズ役はその後24で名を馳せるキーファー・サザーランド。

映像美もクールなニューヨークのシーンとむせかえるラテンの濃密な空気とがレイヤーをなしていて、見事。あまりにこの映画のかっこよさに目が眩んでドラッグに妙な好奇心を抱く人もいるのでは、と危惧を抱くほどだ。50年代アメリカの、戦後文学への展開となった背景を知るにはとっつきやすく、よい作品だろう。