映画レビュー 安非他命 (Amphetamine)

映画レビュー 安非他命 (Amphetamine)(★★★★☆ 星4つ)


(★★★★☆ 星4つ)
 『永久居留』を手がけた監督雲翔 (Scud)の、『永久居留』に続く作品。一応ゲイ映画ということになるだろうか。一応、と接頭辞を置く訳は後述する。
主役は彭冠期 (Byron Pang)。元ミスター香港。カンフーや水泳インストラクターの経験があり、それらの経験は作中の人物カフカの暮らしとしてそのまま投影されている。カフカに惚れ、兼庇護者として恋愛関係を築こうとするダニエルは、外資系証券会社勤めでリッチ、オーストラリアからやってきたという設定だが、これは監督とのバイオに重なる。

つまり、設定を現実から拝借したうえでストーリーが描かれるのだが、現実からのイメージに立脚したうえで、映像やストーリーはファンタジックに仕立てていて、そこが『永久居留』とは違うところ。しかし、『永久居留』のイメージは色濃く、本作中にも『永久居留』をチラ見せするシーンがあるなど、『安非他命』は『永久居留』のバリエーションといったところか。

これはむしろストーリーよりも映像を見せたいのかもしれない。映画への関心をドライブし続けるのは、紛れもなく主役を張った彭冠期のルックスであり、彼が惜しげもなく何一つ隠さずのヌードを披露している点だろう。
極端に言うと、その映像を見せ続けるための裏打ちがストーリーであって、本来あり得べくもないストレートとゲイの恋愛を成立させたり、ダニエルはゲイと言いながら元ガールフレンドがいたり、セックスまでして見せる点は、すべてをファンタジーで包む手法だ。果たしてこれは「ゲイ」映画なのだろうか、と思う。普通に考えると、いくら「性はグラデーション」などと標榜しても、そこまで易々とセクシュアリティーの壁を飛び越える人はそうはいない訳で、そこに違和感を持つと、作品に没入できないことも確かだ。しかし多分、監督はそんな批判も当然生じることを折り込み済みで、こうしたストーリーにしたのだろう。

結局、これはこの映像が好きかどうかというところに尽きる。エンディングも、これがハッピーエンドなのか悲劇なのかは、このファンタジーが気に入るかどうかで解釈が分かれるところだ。俺としては、ファンタジーものにはいつも没入できないタイプなので、違和感は最後まで残り、エンディングも釈然としない感じではあった。が、ゲイ映画として存在意義はあるものだと思う。少なくとも、日本ではこうした映画はできないという点でも。(2017/10/8 記)

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