映画レビュー おそいひと



(★★★☆☆ 星3つ)

重度身体障害者(脳性麻痺の人)が介護者への失恋を機に連続殺人犯になるという内容で、物議を醸した映画。主演自体も脳性麻痺の男性が、これまた本名と同名で演じている。

「差別を助長する」などとの危惧感からこの映画に拒否感を示す人も多いと聞くが、観る限りそんな描かれ方はしていない。重度身体障害者であろうと、正邪さまざまな人は当然いるわけで、性格的に最悪の人もいるだろうし、どうしても好きになれないエゴにまみれた人もまた当然いて、健常者か重度身体障害者の違いは、そこには影響しないということをこの映画はよく描き出している。「こんなにいい人がいてガンバッテルんです」というお涙頂戴的な浅いニュース特集なんかよりも。

が、重度身体障害者であろうと健常者であろうと変わらない、という視点で観るならば、これがこの映画のジレンマなのだが、自分の身近に現れた人への失恋を機にその人が殺人者になっていく、というプロットは、シンプルすぎて、凡庸な映画に見えてきてしまう。設定に慣れれば慣れるほど、筋書きが見えてくると、退屈になってきさえするのが、危ういところだ。その映画としてのスクリプトという意味で、星3つ。要するに、そこはまっとうというよりも、「フツー」なのである。