ブックレビュー パウロ・コエーリョ


アルケミスト – 夢を旅した少年


(★☆☆☆☆ 星1つ)

説教臭く、浅い。寓話的ストーリーなるものはえてしてそうだが、いかにも人に教え諭そうとする姿勢が鼻につく。しかも少年の夢がつまるところ金と女というのが、いかにも即物的すぎて、しらける。また、砂漠を旅するなかで砂漠の民の女が出てくるが、それは「男には自由にさせてやって、一も二もなく待つのが女」という、いかにも因習的な男尊女卑の描かれ方をしていて、これが本当に昔の物語で時代的に致し方ないならまだしも、現代のブラジルで書かれた設定では、あまりもにもお粗末。

それにもましてひどいのは、稚拙すぎる文章。この本の文章は、人をインスパイアするどころか、読ませるレベルにはなっていない。それは訳者(山川紘矢・山川亜希子)に依るところが大きいと思う。お粗末な語彙力に辟易。
この本は、原著のポルトガル語からではなく、英語版から訳されたとのことだが、あまりに無味乾燥で単純すぎて、文章に趣がない。英語訳など出来る人はごまんといる。もう少し人に読ませるに足るものにしてしかるべき。