ブックレビュー エイミー・ベンダー


燃えるスカートの少女


(★★★★★ 星5つ)

極めて現代アメリカ的な舞台で描かれる日常短編集と思って読むと、その設定の非現実的な様にめまいがする。どの話もシュールな設定で、童話、それもちょっと残酷な童話を読んでいるようだ。
しかし淡々と書かれているので、シュールとはいっても、すんなり設定に溶け込んでいって、読めてしまう。その世界は透明で、人間のいやらしい面が描かれていても、可憐な文体と清潔な単語選びですっかり飲み込みやすくなっている。原文はどうなっているのだろうと思ったら、この文庫本の最後には(対訳付きで)特別に英語で一編が収録されていて、これまた何とも美しかった。しかし内容は薄くはない。

ロサンゼルスなどに行くと、青い空とコンクリートのフリーウェイと、ちょっとした社会的病理とを見てとれるが、そうした西海岸の乾いたシュールが見事に作品化されている。現代アメリカの小説で面白いもの、しかし社会問題の重さに押しつぶされないようなバランスのいい作品を探しているならお勧め。