ブックレビュー『自分の中に毒を持て』


岡本太郎(著)


(★★★★★ 星5つ)

「芸術家は作品がすべて、言葉で語るのではなく、作品で言いたいことを表現せよ」とはよく言われることだし、芸術家自身でそう主張する人も大勢いる。しかし、語ったっていいじゃないか。どういうことが契機になって芸術として表すようになったのか、その人は芸術を生きる道として選んだが、選んだ道以外を生きる人のことをどう考えているのか、そういったことがつまびらかになるのは、いいことだ。

岡本太郎とは何と誠実な人であったことよと思う。自分に真剣に対峙している人ならではの誠実でもあるし、他人に対しての誠実でもある。こうすればいい、あなたの苦しんでいることはこうじゃないのかと、ここまで明快親切に言える人は、そうそうはいない。
それは、芸術に生きようとする人に対してだけではなく、働きながら生きる人すべてに向けられたメッセージで、(むろん働かない人にとっても多くのことが得られるだろうが)命を燃やし尽くして生きれば、その燃やす過程での苦しみを凌駕する自分の誇りという喜びが得られることを、分かりやすく説いている。すごい本だ。
『毒を持て』とは言うが、それは人に衝撃を与え、生きようとすることを再確認させるもののことで、毒どころか、得難い妙薬である。