ブックレビュー『フリーメイソン ──「秘密」を抱えた謎の結社』


荒俣 宏(著)


(★★☆☆☆ 星2つ)

まず最初に、小説でないこういう教養書的新書は、どうも苦手だ。事実の羅列で、文章がちっとも面白くない。この本もご多分に漏れず。これは特にフリーメイソンの歴史の解説に大半を費やしているので、歴史の教科書を読まされているようで、退屈で退屈でならなかった。小説家ではないから、文章に味わいなど求めるべくもないが、どうも人に読んでもらうために書いた文章というよりは、自分の頭の中にあるものをそのテーマで書き留めたかっただけなのではないか、と思いたくなる。それくらいに文章としてはつまらない。清書した長ったらしいメモ帳を読まされているような気持ちになる。

あと、最初に読んでいて面食らうのは、「フリーメイソンといえばこれ!」という思い込みで、『ロスト・シンボル』や『ダ・ヴィンチ・コード』を引き合いに出されていて、それを読むがための、あるいは併読するためのもののように書き出されているところ。そういう読解のための本ではないはずだ。どうもあの人はテレビに出ている時もそうだけれども、自分の脳みそに閉じこもって耽溺してしまって、ズレズレにズレているのがなんとも興ざめだ。せっかく、フリーメイソンとはなんぞやという時に基本的スタンスとして、スキャンダラスで謎に満ちたカルト集団的偏向を捨てて、客観的に見せようとしたところがそうした個人的興味でもって台なしになっている。

そうであれば個人趣味で突っ走ればいいものを、ふと客観叙述を思い出したのか、羅列に走る。どうにもこうにも、「ああ、こういう人がいるから学問ってつまらなくなるんだな」と思い、読んでいて気分が下がる。最初の方に思わせぶりな釣り文句が書いてあるのだが、最後まで読むとブツ切れで終わってしまう。そして、フリーメイソンの入会の時の問答の様子などが書かれていることから、「ひょっとして荒俣って?」と考えるのだが、やはりそこら辺も放り出されていて、要するに散漫な一冊。(本に合わせて冗長に散漫に感想を書いてみた)