ブックレビュー 吉田修一


パレード


(☆☆☆☆☆ 星ゼロ)

まさに糞の役にも立たないとはこういう本のことだ。ダラダラ無意味な描写を続けた挙げ句、最後に支離滅裂ながら、その前に無理やり置いた伏線からはさもありなんという犯罪の展開をして、しかもケツが拭けないで終わる最低さ。登場人物の輪郭を生活ぶりでなぞる割には、人物のキャラクター自体を描き出せていない。

辟易するのはそれだけでなく、卑俗な固有名詞の羅列で風景を書こうとするところや、東京に住んでいる者以外何の意味も持たない地名によるロケーション設定。最初はそうした名詞の羅列は消費社会に生きる日本人が避けて通れない、他者の制定したものの介在を描こうとしているのかと思ったり、都会の光景を描くための手法かと思ってみたりしたが、通読するとそれが単なるチョイスの問題にしかすぎず、描こうとすることの必要からきた手法ではないことに気づく。作者の頭とセンスの程度が知れる。

これが山本周五郎賞とは、どんな政治的配慮があったのか、はたまたコンペティターの作がどれもこれに及ばないほど奇跡的にお粗末だったのか知らないが、まあ情けない。(山本周五郎賞の選考会では「ラストの表現方法が疑問」という指摘が花村萬月からあったらしいが、それは適切)

あまりにひどいインクと紙の無駄使いで、家の紙ゴミを出す間置いておくのも堪えられず、買い物で立ち寄ったスーパーの燃えるゴミのところにスーパーのレシートと一緒に捨ててきた。読んだという記憶さえ捨てたいくらいだ。