ブックレビュー 折口信夫


死者の書・身毒丸


(—– 評価不能)

どうにも自分の読解力のなさを痛感した一冊。面白いかつまらないかということの前に、文章が頭に入ってこない。

まず『死者の書』だが、出版は1943年という戦後の年であるのに、文体に慣れず、ひたひたとした墓所の中の人の思いや感覚が描かれていることは分かるのだが、そこから奥へ踏み入ることができなかった。会社の通勤時に本を開くのだが、行きは朝で眠く、帰りは疲れて眠いので、(笑)数ページ読むか読まないかで眠くなり、そんな状況では読みにくさに踊らされてしまって、読んでいるつもりでも目が字を上滑りして眺めているだけになってしまう。エピソードを予習してから読むべきだったと思う。
制作契機を語ったという『山越しの阿弥陀像の画因』は、民俗学者らしい展開なのだが、これもまた読みつけない世界。

そして『身毒丸』(しんどくまる、ではなく、しんとくまると清音で読むことに作者はこだわりがあるらしい)は、それよりもう少し読みやすいものの、どうも描かれている世界に隔世の感があって、没入することができなかった。

いずれも、字面や日本史的背景などに慣れれば荘厳な世界が待っているのだろうが、この本の評価に至らず。その扉を開けることができない自分のふがいなさを感じた。20年くらいしたらまた読んでみたい。(2012/3/29 記)